・朝日10月9日 国の除染 13年度末完了 高線量地域 基本方針近く決定
野田政権は、東京電力福島第一原発事故で飛び散った放射性物質を取り除く除染作業を、原則として2014年3月末(13年度末)までに完了させる方針を固めた。
除染や廃棄物処理の基本方針に盛り込み、近く閣議決定する。
政権が除染の完了時期を示すのは初めてで、長期避難が続く住民の帰還が本格化する時期の目安にもなる。
基本方針は、来年1月に本格施行される放射性物質汚染対処特措法に基づいて策定。
今月11日に開かれる環境省の有識者会議で案を示し、議論を経たうえで閣議決定される運びだ。
方針案では、放射能汚染の一義的な責任は原子力事業者(東京電力)が負うとしつつ、原発を推進した国の責任で対策を講ずる、と明記した。国が費用面も含め、除染に責任を負う姿勢を改めて示した。
また、国が除染作業を担う「除染特別地域」では、原発の直近で被曝線量が特に高い地域を除き、14年3月末までに建物や道路、農地、林野などを除染して汚染土壌を仮置き場に運び入れる、とした。
特別地域の基準には触れていないが、立ち入りが制限されている警戒区域や計画的避難区域、事故に伴って過剰に被曝した線量(追加被曝線量)が年間20ミリシーベルト以上の地域とする方向だ。
基本方針案の通り作業が進んで被曝線量が下がれば、2年半後には住民の帰還が本格化する一つの目安になりそうだ。
ただ方針案の中では、除染作業を終えれば被曝線量がどこまで下がるのか、といった具体的数値には言及していない。
特別地域より被曝線量が低く、原則として市町村が除染を行う「汚染状況重点調査地域」の指定基準は、追加被曝線量が年間1ミリシーベルト以上と明記。被曝線量を2年後に半減させ、長期的には年間1ミリシーベルト以下をめざすが、時期は示していない。
子どもの生活圏を優先的に除染する。
一方、浄水場や下水処理揚で生じる汚泥や家庭ゴミの焼却灰など、放射線量が高い廃棄物は原則として排出された都道府県内で処理する、とした。
これらの汚染土壌やがれきを保管する中間貯蔵施設も「相当量発生した都道府県」に確保するとしたが、施設の建設は「国が責任を持って行う」と言及した。
除染や廃棄物処理の基本方針案(骨子)
・原発事業者が一義的責任を負うが原子力政策を推進した国の責任で対策を講ずる
・追加被曝(ひばく)線量が高い「除染特別地域」は国が除染を実施し、一部地域を除いて2014年3月末までに完了
・それ以外の地域は原則として市町村が除染。追加被曝線量は13年8月末までに半減させ、長期的には年間1ミリシーベルト以下をめざす
・汚泥や焼却灰は排出された都道府県内で処理
・中問貯蔵施設や最終処分場の確保は国が責任を持つ。廃棄物や土壌が大量に発生した都道府県には中間貯蔵施設を設置
除染完了の線量示さず 基本方針国の責任は明確化
野田政権が閣議決定する除染や廃棄物処理の基本方針では、地元の懸念に配慮し、「国の責任」で進めることを改めて明確にする。
だが、除染の完了時期は明記したものの、完了時に追加被曝線量をどこまで減らすかの数値は示さなかった。
国の費用負担も膨らむ見通しで、基本方針の実現性は不透明だ。
政権は原子炉の冷温停止を年内に達成し、その後、立ち入り禁止区域を縮小していく意向だ。
順調なら来年にも住民の帰還が始まり、除染が完了する2014年3月末には帰還を加速させるという筋書きを描いている。
だが、基本方針案では、年20ミリシーベルト以上の地域について、除染完了時の被曝線量の目標値を示さず、「今後具体的な目標を設定する」とするにとどめた。
このため、住民が納得して帰還できるかどうかはわからない。仮に、国が長期的な目標に掲げる「1ミリシーベルト以下」とした場合、わずか2年半で達成できるかどうかはやってみないと分からない。
高い線量が続くようなら、国に対して除染の継続を求める声が上がるのは必至だ。