・特異的抗体 [編集]膠原病では抗核抗体(ANA)が非常に有名である。
しかし抗核抗体が陽性であったとしても臨床的意義がないものが殆どであり膠原病、甲状腺疾患、慢性肝炎といった臨床的意義があるばあいはごく僅かである。また膠原病の中にも抗核抗体が診断に影響しないものがある。
ANA関連膠原病
全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性硬化症(SSc)、シェーグレン症候群(SjS)、皮膚筋炎(DM)、多発性筋炎(PMS)、混合性結合組織疾患(MCTD)があげられる。
これらの疾患はSLE以外は特異的な症状があり、抗核抗体を測る前にそれらの症状の有無を確認しなければ、検査結果の判断は難しくなる。
例えば、SScならば皮膚硬化、SjSならば乾燥症状、皮膚筋炎、PMSならばゴットロン徴候、ヘリオトロープ疹、筋力低下、MCTDならば、ソーセージ指やレイノー症状があげられる。
抗核抗体の特異性が高いとされているのはSLE、SSc、MCTDである。特異的抗体としてはSLEにおける抗dsDNA抗体、抗Sm抗体、SScにおける抗Scl抗体、抗セントロメア抗体、MTCDにおける抗U1RNP抗体、SjSにおける抗SS-A抗体、抗SS-B抗体、DM、PMSにおける抗Jo-1抗体などがあげられる。
上記特異的な症状がなく、抗核抗体を測るような場合とは、特異的な症状を示さない膠原病を疑う時であり、それは通常はSLEのことになる。
SLEは発症時には特異的症状に欠けるのが特徴である。
SLEの診断にはSLEの分類基準(感度96%、特異度96%)を用いるのが一般的である。
SLEの分類基準は11の項目からなり4つ以上を満たすとSLEとなる。抗体以外の項目で9つの項目があるため、そのなかで最低2つの項目に合致しなければ抗核抗体を測定しても診断的な意義はない。
すなわち、関節炎、漿膜炎、痙攣、精神病、血球減少、持続性蛋白尿、円柱、皮疹(蝶形紅斑、ディスコイド疹)、無痛性口腔内潰瘍(口腔上部に多い)のうち2つ以上認められるとき、抗核抗体、抗dsDNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体を特定する意義が生まれる。このような使い方をしていればSLEを強く疑う時、あるいはSLEを否定したいときに抗核抗体は強い武器となる。
ANA陰性の膠原病
抗核抗体が診断に影響しない膠原病としては血管炎、血清反応陰性脊椎炎、関節リウマチ、リウマチ性多発筋痛症、ベーチェット病、成人スティル病などがあげられる。
これらの疾患では抗核抗体が診断に影響しないだけであって、抗核抗体が陰性でなければならないわけではない。健常者でも抗核抗体が陽性となるように、これらの疾患の患者でも抗核抗体が陽性となる場合は多々ある。
ANCA関連血管炎
顕微鏡的多発血管炎(MPA)、アレルギー性肉芽腫性血管炎(AGA)、ウェゲナー肉芽腫症(WG)があげられる。
抗好中球細胞質抗体(ANCA)を測るのはMPA、WG、AGAを疑ったときであるため、急性ないし慢性の腎障害、持続性蛋白尿、原因のはっきりしない肺陰影、喀血、紫斑、多発性単神経炎、鼻中隔穿孔を認めたら測定する。
血清における陽性率はAGAで50%、WGの活動期で90%、MPAで70%であるためANCA陰性であってもANCA関連血管炎の可能性を否定はできない。
腎生検などによる免疫染色は若干陽性率が上がる傾向がある。