・出典:健康情報サイト
http://kenko.data-max.co.jp/
・悠香『茶のしずく』裁判を考える~受託企業の責任は?
2011年9月22日 15:11
<受託製造元はフェニックス>
福岡県の通信販売会社(株)悠香(中山慶一郎社長)が販売するお茶石けん『茶のしずく』の問題で、仙台の被害者が8月30日付で損害賠償訴訟を仙台地裁に提訴していることが明らかになった。
『茶のしずく』をめぐっては、同品の使用者がアレルギーやアナフィラキシーを発症して病院に搬送されるなどの被害が相次ぎ、この問題について各地に被害弁護団が結成されるなど全国的な広がりをみせている。
被害弁護団は今のところ10都道府県で発足している。仙台弁護団でも10月に説明会を行なう予定だという。
今後この問題で争点となるのは、製造販売会社である悠香の責任問題だ。また、同製品の製造元である㈱フェニックス(中野裕司社長)の動向にも注目が集まっている。
フェニックスは1948年に清和油脂工業㈱として設立された。
50年に行なわれた石けん配給統制廃止と共に全国百貨店や卸問屋に石けんの納入を開始した。
5年後の55年、20円化粧石けんとして、我が国で初めてケース入りの『皆様石けん赤函』を発売して石けん製造会社としての揺るぎない地盤を築いた。
その後も順調に成長を果し、83年に現商号に変更した。
元来、関西には固形石けんの製造会社は多い。
<被害弁護団は追及姿勢>
フェニックスはアレルギー症状などの原因となった含有成分「加水分解コムギ」を配合した石けん類を数多く受託製造しており、「流通したすべての製品を回収中」(同社)という。
該当製品は全部で21品目にも及んでいる。
ただし重篤なアナフィラキシーショックやアレルギー症状を誘引したのは、今のところ悠香が2010年12月7日まで販売していた『茶のしずく』にほぼ限定されている。
9月1日現在、国民生活センターのPIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)には、同製品に関する相談が1,309件寄せられているという。そのうち、危害に関する相談は614件。
同じく、消費者トラブルメール箱には24件の危害情報が寄せられている。
同センターでは製品使用の中止や悠香側に対して回収情報の周知徹底を求めているが、8月8日の時点で交換返品が終了したのは全顧客467万人のうち約40万人と1割にも満たない状態だ。厚生労働省も症例や加水分解コムギに関する研究の報告を行なうよう各自治体に求めている。
茶のしずく石けん被害救済東京弁護団は9月10日、東京都内で被害者説明会を開き、弁護団は悠香に対し、「製造物責任法と民放709条による損害賠償請求を行ない責任を追及していく」としている。
<責任は悠香かフェニックスか?>
このような動きのなかで、悠香が製造会社であるフェニックスに対して賠償責任を押し付けるのではないかと関係者の間で囁かれている。
悠香は営業を開始してからわずか6年で307億円(2010年6月期)の売上を達成している。
一方のフェニックスも悠香の成長とともに売上を伸ばして、10年5月期の売上は前年同期比136%増の42億円と増収増益となっているものの、悠香の売上による受託メーカーの儲けはわずかなものだろう。
賠償請求が上代ベースで行なわれればたまったものではない。
ましてフェニックスの11年5月期は昨年の製品切り替えの影響などがあってか、20%近い減収となっている。
5月20日の回収以降の影響を考慮すると、ただでさえ厳しい状態にあるものと予想される。
悠香が賠償責任を求めるようなことになれば、一気に苦境に陥りかねない。
厚生労働省はNET-IBの取材に対し、「一義的責任は製造販売会社にある」と明言した。
パッケージに記された製造販売元は現在、「株式会社 悠香」となっている。危害を与えた石けんも悠香であれば、責任は悠香側にあると考えられるが、「契約上の問題だろう」と語る業界関係者もいる。
この件に関して、フェニックス側は依然として口が固い。ただ、受託製造元の責任が問われるとなると、次は原料メーカーへと問題が遡及することも考えられよう。厚労省が認可したとされる成分規格の是非が問われるような事態になれば、訴訟も長引きそうだ。
被害者の証言によれば、悠香はPL(製造物責任)保険に加入していると聞く。金額は不明だが、責任に応じた賠償に向けて具体的な動きを示してはどうか。有名女優を起用して大々的な広告宣伝を繰り広げ、結果的に被害を拡大させたのは悠香なのである。