・ミニシンポジウム40
食物アレルギー・薬物アレルギー―病態生理と治療5―薬物アレルギー―
座長:井上壽茂1), 森田栄伸2), 福田康二3)(住友病院小児科1), 島根大学医学部皮膚科学2), 枚方公済病院呼吸器内科3))
MS40-9.エルロチニブによると考えられた潜在性薬剤性肺炎の1例
市川由加里1) 安井正英1) 野村 智1) 中積泰人1) 早稲田優子2) 高戸葉月2) 犬塚賀奈子2) 藤村政樹2)
金沢市立病院呼吸器内科1) 金沢大学大学院医学系研究科細胞移植学呼吸器内科2)
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症例は51歳男性.2006年7月,近医にて左肺空洞性病変および両肺びまん性スリガラス影を指摘され,金沢大学病院呼吸器内科を紹介受診した.
精査の結果,肺扁平上皮癌および溶接工肺と診断された.
肺癌に対し化学療法を施行されたが,徐々に肺癌の増悪を認め,治療継続目的に2008年5月当科入院となった.
胸部CT上,両肺びまん性に淡いスリガラス影および左下葉に4cm大の腫留影を認めた.
エルロニチブを開始し,内服開始28日目,腫瘍は縮小傾向にあったが,両肺スリガラス影のわずかな悪化を認めた.
32日目に低酸素血症を認めたため,薬剤性肺炎を考え,33日目以降内服を中止した.
その後,陰影はさらに悪化し,%RV,%TLCの低下を認めた.
%DLcoに変化はなく,緩徐な慢性型間質性肺炎の経過を認めた.
BALFリンパ球68.0%と上昇を認め,経過よりエルロチニブによる薬剤性肺炎と診断した.薬剤中止のみでは改善せず,ステロイド投与を開始し,陰影,呼吸機能,低酸素血症は改善した.
エルロチニブによる薬剤性肺炎の場合,潜在性に緩徐に進行することもあり,無症状であっても,胸部CTや精密肺機能検査などで慎重に経過をみる必要がある.
第59回日本アレルギー学会秋季学術大会 2009年10月開催