・ケンコーコムVS厚労省~医薬品ネット販売訴訟のゆくえ(3)
2011年9月21日 11:39
これまで第一審、第二審の経緯を見てきたが、両者の論点をケンコーコム側では以下のとおりわかりやすくまとめてみた。
・これらの動きに対し、通販コンサルタントの白川博司氏がNET-IBに以下のようなコメントを寄せているので紹介しよう。
次回からケンコーコムの後藤社長のインタビューを掲載する。
【田代 宏】
ストップ・ザ厚労省~改正薬事法が招いたネット規制
2009年6月に施行された改正薬事法では、厚生労働省の省令で医薬品の一部についてインターネット販売を禁止した。
この規制の適法性を問い、省令の無効確認や取り消しを求めた医薬品・健康食品のネット通販会社「ケンコーコム」と「ウェルネット」2社の国を相手に提議した損害賠償請求が3月30日に棄却された。この2社は控訴し、解決には時間がかかると予測されている。
「ネット生活が浸透してきている今、利便性を考えたら、国民にとって損失だ」(ウェルネット・尾藤昌道社長)。
「ネットでは、ペテン師がうそつきに医薬品を販売しているとの想定に立っている判決」(ケンコーコム・後藤玄利社長)
ケンコーコムは、この規制により年間売り上げが5億円減少し、利益も9,500万円落とした。
問題なのは、単に2社の売上減ということではなく、ネット販売は対面販売よりも、下位にあるという東京地裁の判断である。
司法のこの明言は、ネット社会に対する見識の無さと、消費者(国民)動向への無知と言わざるを得ない。
この東京地裁の判決理由の1つとして、「対面販売は薬剤師らが購入者の顔色や体格などを見るなどして、状態を把握できるが、ネットでは困難」と指摘している。
ワン・トゥ・ワンマーケティングといわれる通販は、顧客対応の手法としては、有店舗(対面)より優位性は高い。
情報量ほか展示スペースが無制限に近く、進出企業のすべてがこの利点に魅力を感じ、消費者もこぞって支持した結果が、今日の「通販大国、日本」である。
楽天の三木谷浩史社長も、常に「楽天市場は究極の対面販売」と主張し続けている以上、この2社を後押ししている。
この「対面はネットに勝る」とする判断がどこから出てくるのか――。
またその判断が拡大解釈されると、ネットでの成人確認が不十分な、ネット酒類販売も不可能になる。
要は、省令や行政指導などで自由度の高い通販ビジネス自体の否定につながる危険性がある。
今回の司法判決のように、消費者(国民)の常識が通じない判決はあってはならない。