・出典;化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
・http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/tsuushin/pico_master.html
12月4日 化学物質問題市民研究会主催 NGO国際水銀シンポジウム
水俣病と世界の水銀問題 水俣から学び、強い水銀条約とする
途上国における小規模金採鉱
フィリピンの事例
リチャード・グティエレスさん(比)
(Ban Toxicsバン・トクシックス代表)
■はじめに
ASGM=小規模金採鉱の水銀使用についてお話します。
フィリピンでもミナマタ問題がつくられつつあるということと、それには私たちが共同で対応していかなければならないということをお話したいと思います。
最初に小規模金採鉱の問題がいかに複雑であるか、理解していただきたいと思います。
水銀の話をする時に金(きん)の話をしなければならないということは皮肉です。
これは技術的問題というより、根本は貧困問題です。
貧困であることで問題は複雑になります。
■小規模金採鉱問題は貧困問題
これまでBan ToxicsとしてASGM小規模金鉱についてどのような活動をしてきたか。まず高木市民科学基金の支援で、ASGMについて調査をしました。
環境・天然資源省の小規模金採鉱のための国家戦略計画策定にも協力しました。
小規模金採鉱に関する意識向上を図るために、国際機関やほかのNGOとも協働しています。
この問題は貧困問題です。
フィリピン人の100人中33人が貧困層です。2,700万人が月収150ドルすなわち1万2千円以下の収入で、家族5人生活しています。
貧困層のほとんどは田舎に住み、農業、漁業に従事していて、6人以上の大家族です。貧困家庭の3分の2では、世帯主が小学校以下の学歴です。
彼らは財産を持っていないので融資を受けることができず、主な収入源は非公式な分野の活動からです。
貧困世帯の大部分は慢性的な貧困状態にあります。
皮肉なことに、最貧の10州のうち5州に豊富な金の鉱床があります。
この資源は災いでもあります。
金生産量のうち小規模な採掘で2万6千kg、大規模が1万kgです。
小規模採鉱は2人から3人、せいぜい10人くらいで手か、簡易な機械で採掘しています。
フィリピンの金鉱床は50億トン以上と推定されています。
これは専門家から世界全体の供給量よりも多いと言われていますが、フィリピン政府は50億トンと言っています。
世界の金産出国のトップ10に入っており、40州以上で金鉱床が確認されています。
小規模金採鉱には1万8千人の女性、子どもを含む30万人以上の労働者が従事していて、200万人以上が家計をそれに頼っています。
小規模金採鉱は、伝統的な、ゴールドラッシュの時代の採鉱です。
法的には採掘権を認められていないので、非公式な労働者ということになります。
国内最大の水銀発生源となっています。
採鉱者の体内水銀濃度はWHO制限値の50倍くらいになります。
■合金アガルガムを加熱して
採鉱方法は、地表、地下、水中などがあります。60センチ四方の穴を掘り、そこに水をためて、コンプレッサーを使って汚泥を吸い上げます。
ロッドミル、ボールミルで鉱石を粉砕し、より細かい粒子にします。
重力濃縮法や樋流し法、あるいは西部劇で出てくるパンニング(鍋)法があります。
アマルガム法は、水銀10~25gを使って金1gを産出します。
鍋の中の金と水銀の合金アガルガムを加熱して、水銀を蒸発させます。
水銀が大気に放出されるというひじょうに危険な方法です。
ホウ砂法では、ロッドミルの中に水銀を注入します。
水銀をたくさん入れた方が金がたくさん採れると信じられていますが、専門家にいわせれば、金の量と水銀の量とは関係ありません。
無駄な水銀が流出するとともに、大気にも放出されます。
シアンを使うことも一般化してきています。
より多くの金を抽出しようということで、カーボンインリーチ法では、シアン化溶液と水銀、鉱石を入れて撹拌します。
シアンによって不純物が溶けて金が残ります。