(2)米国環境保護庁(EPA)
EPAは、従来、イラクの研究を根拠にメチル水銀のリファレンスドース(RfD)を設定していた。
2001年、EPAは、フェロー諸島前向き調査の胎児期曝露の児の神経発達の研究に基づき、エンドポイントを発達神経生理学的欠陥として再評価を行い、7歳児の神経生理学的影響から母親臍帯血水銀濃度46~79ppbをBMDL(95%信頼区間の下限値)とし、それを母親血中水銀濃度としてそれに相当する母体の摂取量がワンコンパートメントモデルを用いて0.857~1.472μg/kg体重/日に相当すると算定された。
これに不確実係数10を用いてリファレンスドースが再計算された。結果として、従来のリファレンスドースは変更されず、0.1μg/kg体重/日のままである(EPA(22))。
(3)米国健康福祉省/有害物質・疾病登録局(ATSDR)
ATSDRは、1999年、セイシェルの胎児期曝露の66ヶ月児の神経発達の研究に基づき、母体の毛髪水銀最高濃度群の平均15.3ppmをNOAELとして、ワンコンパートメントモデルを用いて、無作用摂取量として1.3μg/kg体重/日が計算された。
この無作用摂取量に、不確実係数4.5(①人のトキシコキネティクス・トキシコダイナミクスの変動(3)+②フェローの研究で検出された僅かな影響(1.5))を用いて、 メチル水銀(経口)の最小リスク水準(Minimal Risk Level: MRL)は、0.3μg/kg体重/日とされた(ATSDR(8))。
(4)英国/COT(COMMITEE ON TOXICITY OF CHEMICALS IN FOOD, CONSUMER PRODUCTS AND THE ENVIROMENT)
COTは、JECFAが2003年にメチル水銀の再評価を行ったことに伴い、2004年に魚介類等の水銀に関して再評価を行った。
その結果、「2000年のPTWI(3.3μg/kg体重/週)を発生毒性以外の影響から保護することを目的とするガイドライン値として差し支えない。
2003年のJECFAのPTWI(1.6μg/kg体重/週)は胎児を神経発達への影響から保護するために十分であり、妊婦および1年以内に妊娠する可能性のある女性に対する食事時のメチル水銀の摂取量評価に使用するべきである。」と結論付けた(薬事・食品衛生審議会(17))。
(5)オーストラリア・ニュージーランド食品基準庁(FSANZ)
FSANZは、2004年3月、魚類中の水銀に関するガイドラインを更新した。胎児は成人に比してメチル水銀の影響を受けやすいため、FSANZは2つのPTWIを用いている。
一般集団には、3.3μg/kg体重/週を用い、胎児には、約半分の1.6μg/kg体重/週を用いる。(薬事・食品衛生審議会(1))
runより:シリーズ(1)はこれにて終了です。3日ほど空けてからシリーズ(2)を掲載します。
色々考えさせられる文で、サメなどはカマボコ、魚肉ソーセージに使われてるし、水銀の体内への侵入経路は多々あると思います。