・<小麦由来石けんは世に数多>
NET-IBでは、悠香のお茶石けん『茶のしずく』が自主回収に至るまでの経緯について、厚生労働省医薬食品局安全対策課に確認した。
「狙い撃ち」だったかどうかについて厚労省は、「そうではない」と明確に否定した上で回収に至るまでの経緯を説明した。
昨年2010年10月15日に同省が通知した注意喚起『小麦加水分解物を含有する医薬部外品・化粧品による全身性アレルギーの発症について』に関して、「医療機関の専門医の先生方から全部で21例の報告を受けた」ために各都道府県の衛生主管部局宛てに通知を出したとしている。
5月20日に厚労省記者クラブで発表された自主回収についてNET-IBの取材に対し悠香側は、「厚労省と話し合った上で自主回収に踏み切った」と話した。その真偽について厚労省に確認した。
要約すると、厚労省の話はこうだ。
「今年になってからも悠香の石鹸に関する副作用報告があった。
必ずしも運動負荷によって発生した症状に限らないが、医療機関や専門医・開業医から複数の報告を受けている」という。
そこで厚労省で中身を精査したところ、新しい成分、つまり昨年12月8日以降に悠香が発売したシルク由来成分を用いた石けん以外の製品を使用した際に起きた症例だったため、まだ小麦由来成分を用いた旧製品が消費者の手元に残っている可能性があると判断したという。
すべては悠香側の報告に基づくものらしく、厚労省では「旧製品を回収した方がいい」と悠香側に伝えたとしている。
そして厚労省記者クラブで資料の投げ込みによる発表に至った。
実際のところ、水面下でどのようなやり取りが行なわれたかは知る由もないが、要約すると以上のようなことになる。少なくとも悠香側は、厚労省に報告されたとされるアレルギー発症事例46例(10月15日までに厚労省に報告された21例を除く)のうちのいくつかを今年になってから把握していたことになる。
悠香ではこれまで、「顧客に対してDMなどで注意を促していた」としているため、個別の相談なども受けていた可能性は高い。
ただ、加水分解コムギ末を使用している石けんはほかにも市場に出回っているにもかかわらず、なぜ悠香の石けんだけが問題になったのか? 製造元の(株)フェニックス(奈良県御所市、中野裕司社長)に問い合わせた。
同社に悠香以外にも加水分解コムギ末を使用した石けんを製造しているかどうかを確認した。
また使用しているとすれば、過去に同様の問題が発生したことがないかどうか尋ねたところ、「現在、情報を集めている段階で回答はできない」とのことだった。
「今後説明できる段階が来たら、きちんと説明する」とのことで、今回の事件に関しては悠香に窓口を一本化しているようだ。
しかし石けんの受託状況については、悠香側が把握できるはずもなく、回答責任はフェニックス側にあると思われるのだが。
これに対し厚労省は「加水分解コムギ末を使用した石けんは市場に数多(あまた)ある」と明言した。