むろん、こうした飲料自体は“毒”ではない。
飲ませる量や、飲みながら寝る習慣に問題があるのだ。
赤ちゃんのためのやさしい飲料とうたい、ニプル(ゴム乳首)が取り付け可能なある飲料(糖分5%)のラベルには、小さな文字でこう記されている。
「粉ミルクの調乳に使わないように」「寝る前にニプルで飲ませることや、だらだら飲みは虫歯の原因になることがある」
だが、消費者は、そのただし書きよりも、人気タレントが一気に飲み干すCMの映像に目を奪われがちだ。
漠然と「体にいい」と思い込み、水代わりに与えてしまう
保健師は嘆く。
「だけど、本当に怖いのは、健診にさえこない親子。そんな人たちにこそ、食育が必要なんだけど、私たちの声は届かない」
1月、福岡市内の小学校で、一風変わった食育授業があった。
講師役の大手スナック菓子メーカー社員は、「おやつは量を決め、時間を守って食べよう」と呼びかけた。
「スナックスクール」と題された授業のハイライトは、いつも食べているスナック菓子の計量作業。
1日に食べる量をはかりに載せるのだ。
「70グラム」「80グラム」…。ところが、食べていい量として示されたのはわずかに35グラム。
全員から「うわ、少なーっ」と声が上がった。
この企業は3年前から食育支援プログラムを始めた。
教師アンケートで、「子どもに薦めたくない食べ物」のトップとしてスナック菓子が挙げられたからだった。
他のおやつ(牛乳180ミリリットル)との兼ね合いで決めた「35グラム」は、商品としてはミニサイズの量。
「販売減になる」と営業担当の反対もあったが、食への意識が高まる中で先細りするよりは、「長く付き合ってもらう」方を選んだ。
学校側は、「企業側に売りたいという思惑はあるかもしれない」と思う。
しかし、食育にかける予算がない中、無料の出前授業は魅力だ。
「基本法はできても、食育以外にやらなければならないことはいっぱいある。どうすればいいのか、道筋が見えてこないんです」
無知、思い込み、戸惑い、そして企業の思惑…。昨夏、食育基本法が施行されて以来、ブームとなった「食育」。
だが、その前途は“五里霧中”だ。