・「出典」西日本新聞
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/lifestyle/shoku/rensai/
・食卓の向こう側・第5部 脳、そして心へ<1>プロローグ 「宝子」が教えるものは
母と胎児をつなぐへその緒から内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)が発見され、キレる子どもや凶悪な少年事件が社会問題化している現代。
それらへの数多い分析がある中、食べ物や食生活も見逃してはならない重要な要因の一つです。
食卓の向こう側・第五部「脳、そして心」は、私たちに迫る危機を食と、そのかかわり方を通して見つめ直します。
福岡市の女性歯科医(35)が一枚の写真を取り出した。
「これ、見てください」
大きく開いた幼児の口。真っ黒な歯が並んでいた。
「どうしたんですか」
「母親がね、よくコマーシャルで見るスポーツ飲料を水代わりに飲ませていたの」
「なぜ、そんなことを」
「彼女は言ったわ。『だってセンセー、水じゃ栄養ないでしょ』って」
こんなひどい虫歯になるのもかわいそうだが、問題は歯痛だけにとどまらない。女性歯科医は続けた。
「噛(か)むことは、食べ物の消化だけではなく、脳の発達にもつながっているの。親の無知は子への罪といえませんか」
「ゆがんだ食生活や、人体に有害な物質。その影響は、大人より子ども、幼児より乳児、胎児、受精卵と、成長をさかのぼるほど大きくなる」
熊本県菊池市の公立菊池養生園長入佐孝三(51)の指摘だ。