・■朝日8月24日 汚染がれき対策 処分先は棚上げ 特措法案、衆院通過
東京電力福島第一原発事故による放射能汚染に対応する特別措置法案は23日に衆院を通過し、26日の参院本会議で可決・成立する見通しだ。
原発政策を推進してきた国の社会的責任を踏まえ、高濃度に汚染された地域の除染やがれきの処理を国が実施することを明記した。
ただ、除染などで出た高濃度の廃棄物の最終的な処分先は決まっておらず、課題は山積している。
法案が成立すれば、全面施行は来年1月になる。
それまでは原子力災害対策本部(本部長・菅直人首相)が近く決定する基本方針に基づき、暫定的に除染作業を進める。
来年1月に所管となる環境省は、100人規模の職員増員を第3次補正予算で要望し、福島県などに常駐させる方針だ。
検討会を設け、除染作業やがれき処理の指針を今秋に策定する。
最大の課題は、除染で出る高濃度の汚染土やがれきの焼却灰などの処分先が決まっていないことだ。
環境省内には、最終処分場を福島第一原発の周辺につくる案があった。今年6月、福島県を訪れた南川秀樹・環境事務次官は県内に最終処分揚を新設する考えを伝えると、佐藤雄平知事は「県内はあり得ない」と猛反発。その後、細野豪志原発担当相は「(福島県には)絶対するべきではない」と軌道修正したが、その後も国は方針を決め切れていない。
最終処分先の確保には、地元との調整を丁寧に進める必要がある。環境省が指針を定めるまでに解決できる見通しはない。
まずは除染やがれき処理を急ぎ、最終的な処分先は改めて検討する考えだ。
法案ではまた、汚染が著しい地域を「特別地域」に指定して国が除染作業にあたり、より汚染が軽い「重点調査地域」では自治体が除染し、自治体の要請があれは国が代行する。
両地域の線引きは、現地調査などを経て環境省が定める。
当初の案ではこうした地域の区別はなく、原則として自治体が除染の主体となり、必要なら国が代行する内容だった。
「被災地に手足がない国がすべてをやれば、作業が遅れる」(環境省幹部)との理由だった。
しかし、被災地や野党の反発が強く、国がすべて実施する「特別地域」を設けるという修正を迫られた。
今後、「特別地域」を広げるように求める声が自治体側からあがる可能性があり、地域指定でも難航が予想される。(長富由希子、小林哲)