・首都圏には住めなくなる「重大危機」
いよいよ、冒頭に述べた"重大危機"の語である。
ご存じのとおり、3月11日の東日本大震災の直後、千葉県市原市のチッソ石油化学五井製造所と隣接するコスモ石油干葉製油所で、液化石油ガスタンクが燃える大火災があった。
コスモ石油で火災が起きた直後、「有害物質が雨などとともに降るので注意」という内容のチェーンメールがインターネット上に出回つた。
これに対し、会祉側は「LPガスの燃焼によって発生した大気が人体へ及ぽす影響は非常に少ない。
有害物質が雲などに付着し、雨などといっしょに降るという事実はありません」と打ち消した。
結局、このチェーンメールは流言飛語として扱われた。
しかし、である。
鎮火に10日を要する大火事の炎は隣のチッソ石油化学へ延焼し、保管倉庫を焼いた。
その倉庫に保管されていたドラム缶33本は辛うじて難を逃れたが、ドラム缶の中には総量765キログラムの金属が入っていた。
その金属とは。
劣化ウランだった。
消火にあたった消防署員はこう話す。
「ガス濃度が高く、現場に人れたのは鎮火後でした。保管倉庫はほぽ全焼で、ドラム缶を囲う鉄板は変形し、コンクリートは変色していました。ドラム缶の上には、焼け落ちた倉庫の屋根の破片が落ちていました」
もし、劣化ウランが燃えたら、どうなったのか。
「劣化ウランは燃えやすく、粉塵になる。吸い込むと粒子が気道に沈着し、アルファ線が細胞を破壊する。もし免疫細胞が破壊されると、人体に重大な影響を与える」(劣化ウラン研究会の山崎久隆代表)
「劣化ウラン弾が燃えた後には、直径1マイクロメートルの微粒子に1兆個の原子がある」(矢ケ崎氏)
ドラム缶に火が燃え移るか、焼け落ちた屋根がドラム缶を突き刺していたら、燃焼でウランの微粒子が飛び散り、風に乗る。首都圏を中心に、取り返しのつかない放射能汚染をひき起こしていたことは間違いない。
そもそもこの劣化ウランは、チッソ石油化学が工業用ガス製造州の触媒として過去に使用していた。
しかし、文科省には保管している事実を報告しないまま、2005年6月に「湧き出し」の扱いで、急遽届け出ていたものだった。
チッソ石油化学の担当者は、こう説明する。
「劣化ウランは放射線量も低く抑えられている」
だが、そんな危険な核物質が、ひとたび燃えだせば消し止めることさえ困難な石油タンクのそばに置いてあった事実は重い。