・調査対象の曝露要因としては、
(1)主として体内に蓄積されやすい物質、胎盤を通過しやすい物質、子どもの曝露の機会が増えている物質、国民が不安や心配に感じている物質と考えられる化学物質など、
(2)遺伝要因、
(3)対象者の居住地などの基本属性、食事(食物摂取頻度など)、職業、妊娠歴、合併症、既往歴、家族の既往歴、生活習慣(運動、睡眠など)、ストレス度、性格、社会経済状態、社会環境、居住環境など--が想定されている。
アウトカムとしては、
(1)成長発育状況、
(2)先天異常、
(3)精神神経発達障害、
(4)免疫系の異常、
(5)代謝・内分泌系の異常--が想定されている。
こうした暴露要因とアウトカムの関係を、質問票調査や面接調査のほか、母親については血液・尿・毛髪ならびに母乳の採取、分娩時の臍帯血の採取、子どもについては血液・毛髪・尿の採取、父親からは血液の採取を通じて蓄積した情報をもとに分析していく。
協力者の申し出まだわずか
対象者(子ども)のすべてが13 歳に達した後、5年間のデータ解析期間を設け、2032年度までが調査期間になるということなので、その頃には、例えば「胎児期及び幼少期における化学物質への曝露が、その後のアレルギー疾患に関与する」という仮説が支持されるか否かが明らかになることだろう。
調査によって子どもたちの成長・発達に影響を与える環境要因が明らかとなれば、リスク管理部局に情報を共有して、化学物質規制の審査基準への反映、環境基準(水質、土壌)の改定等、適切なリスク管理体制構築が可能になる。
もちろん、結果が出る20年後まで、化学物質規制の審査基準や環境基準をなんら変えずにいてよいのかという問題は、別途、明確に存在する。
したがって、我々は、予防原則に基づいて、化学製品の安全性に関する情報の再評価や適切なリスク評価を、着実に実施していく必要がある。
それでもなお、今回の「エコチル調査」の意義を強調したい。
これほど大規模かつ長期にわたって行われるこの種の調査は、例を見ないものであるからである。
国際的にも注目度は高い。
長期間、調査対象となることを受け入れる両親と子供たちの負担は、きっと報われるだろう。
調査結果からは、企業にとっての「不都合な真実」がいくつか浮かび上がってくるに違いない。
「持続可能性」に舵を切るためには、こうした地道な判断材料づくりがどうしても欠かせない。
残念ながら、「エコチル調査」の知名度は必ずしもまだ高くないようた。
2011年6月末時点で調査協力を承諾した母親は約9000人、父親は約3000人だという。
3年間で10万組という当初の計画に向かって、一層の認知度アップを期待したい。