どうなる放射能汚染物の処理【5】次々明らかになる「安全」のウソ | 化学物質過敏症 runのブログ

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・日経BP社ECO JAPANより
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・井部正之(ジャーナリスト)

 「答えになってない!」
 「ちゃんと答えてください!」

 東京電力・福島第1原子力発電所の事故により放射能汚染された災害ゴミの処理をめぐって8月25日に実施された政府交渉でしばしば参加者から不満の声があがった。

 「放射性廃棄物スソ切り問題連絡会」「廃棄物処分場問題全国ネットワーク」「原子力資料情報室」という3つの市民団体の呼びかけで衆議院第二議員会館において実施された交渉は、放射能汚染された災害がれきの廃棄物処理をめぐるものとしては初めてのものだ。

政府側からは原子力災害対策本部、原子力安全委員会、厚生労働省、国土交通省、農林水産省、環境省が出席した。

 最初の争点となったのは原子力災害対策本部および原子力安全委員会との質疑だ。

原子力安全委員会が6月3日に示した「東京電力株式会社福島第1原子力発電所事故の影響を受けた廃棄物の処理処分等に関する安全確保の当面の考え方について(当面の考え方)」と、これをもとに原子力対策本部が6月16日に出した「放射性物質が検出された上下水処理等副次産物の当面の取り扱いに関する考え方」で、放射能汚染された上下水道汚泥の廃棄物処理や輸送、保管における周辺住民の放射能曝露を1年間で1ミリシーベルト以下とするという条項だった。

廃棄物処理だけで年間1ミリ被曝
 「この考え方に示された1ミリシーベルトというのは一般人の1年間の被曝量そのものです。なんとなく納得できるよう思えてしまいますが実は違います。すでに環境が汚染されていて理由なき被曝を強いられている。それにプラスして廃棄物の被曝があるわけです。ところが、廃棄物処理だけで年間1ミリシーベルトということは、これだけで年間被曝量が満杯になってしまう。おかしいじゃないか。安全率をかけて、たとえば10マイクロシーベルトにすべきじゃないか」と「放射性廃棄物スソ切り問題連絡会」の末田一秀氏が解説する。

市民団体側はこのような理由で「当面の考え方」を撤回し、一般人の総被曝量が1年間で1ミリシーベルト以下となるような考え方を示すよう国側に求めていた。

 だが、原子力安全委員会事務局規制調査課の丸山智・規制調査官は「原子力安全委員会は廃棄物処理等にともなう周辺住民の線量が(年間)1ミリシーベルト以下とするとの考え方を示しています」と条項を棒読みするような回答だった。原子力災害対策本部原子力被災者生活支援チームの布田洋史・専門官も同様の見解だった。

その後、丸山氏とは次のようなやりとりがあった。

 「当面の考え方」を決めるにあたって安全余裕(環境規制などを決める際に安全性に余裕を持たせるため、リスク評価によって得られた値より実際の規制値をさらに引き下げる考え方)をどうみたのか?

 「現存被曝状況(すでに存在している汚染源がもたらす被曝)で(年間)1ミリシーベルトを超える場所が多いという認識。

そこで除染活動や廃棄物処理で全体としては下がっていく。一部処理をする焼却施設とか処分場に(汚染源が)集まってくるというご懸念だと思います。

環境を改善し、周辺環境を整えることで1ミリを超えないようにする」

──(除染などによる)環境の改善は処理施設の周辺に限っての話でなくて当たり前でしょ。

(通常の年間1ミリシーベルトの被曝に)プラスアルファされる廃棄物処理にともなう被曝がなぜ年間許容線量いっぱいの1ミリなんですかと聞いている。

 「1ミリを現在の年間線量にそのまま上乗せとならないように、低減の努力を積極的に行うということだと思います」

──努力するのはいいですよ。しかし、プラスアルファとするときは安全率を普通は見るでしょ。

クリアランスレベル(「放射性物質として扱う必要がない物」を区分する基準)の設定時は安全率を100分の1掛けて、(年間1ミリシーベルトから)年間10マイクロシーベルトにした。

今回はなぜ安全率をみてないんですか?

 「最終的に平常時の状態に戻す。戻せば1ミリ以下に下がる。その範囲の話のなかで……」

──プラスアルファの議論をしている。

廃棄物処理のところは(通常の年間1ミリシーベルトの曝露に)プラス1ミリシーベルトですね?

 「1ミリは廃棄物処理施設から受ける影響としての線量です」

──安全率についての検討はしたんですか。廃棄物処理にともなう年間1ミリシーベルトの被曝という方針を示す時にどう検討したのか。

 「現存被曝状況のなかでいろいろな影響を受ける。じゃあ廃棄物はどうなのかということで1ミリと。最終的に1ミリ以下にすると……」

──そんなこと聞いてない。