・2. 二本松市 三保恵一市長
5月3日に二本松市で、山下俊一アドバイザーの講演会が開催されました。
この講演会を主催し、講演を傍聴した二本松市の三保恵一市長が、山下俊一氏の講演について、取材(Our Planet TV)で述べた内容を紹介します。(YouTube OurPlanetTVのインタビュー5月27日に基づく)
福島原発事故で放射能が漏洩してから76日が経過したが、現在も進行中である。
土壌汚染についても文部科学省の発表によれば、二本松市は30万から60万ベクレルという状況である。
これはチェルノブイリでの原発事故の避難区域となった55万5千ベクレルに匹敵する。
あるいはそれを上回る地域もある。
国にホールボディカウンターによる検査を要請してきたが、まだそのような段階にいたっていないとのことなので、市民の健康と安全のために市独自でホールボディカウンターによる検査、被曝調査を実施することを決定した。
検査の結果、被曝していなかったということを一番に願っているが、その結果について、必要があれば市長として、あらゆる事態に対処していかなくてはならない。
また二本松市というひとつの自治体だけでなく、この中通地域は同じような状況に置かれているので、一緒に、子どもと市民が安全を確保できるよう国に求めていく。
放射能に対してどう向き合うのか、どう対処するのかが大事である。
そのような立場で、県のアドバイザーである山下先生に、お忙しい中をおいでいただいて、講演会を開催させていただいた。
放射能から身を守る健康リスクについて、お話いただいた。
その中で気になったことがあった。それは放射能について国が、政府が決めたことは、それを守っていくことが国民の義務であるという主旨の話を何度も強調された。
私は、東電のこの事故、そして放射能漏洩放出は、現在までの経過を見て、これは天災ではなく、人災であると判断している。
日本の原子力発電所は安全である。
チェルノブイリの発電所、スリーマイルの発電所と日本の原発は違う。
世界一の技術で作っているので安全だ。
3重の壁、5つの防護をしているので大丈夫だと聞かされてきた。
そのような中で、安全神話が絶対的となっていた。
山下先生は原爆投下を受けた長崎県の長崎大学の先生だということで期待していたが、先ほど申したとおり、政府の言うこと、国の言うこと守ることが国民の義務であるという主旨のことを言われた。
私は二つのリスクがあると思う。
ひとつは肉体的なリスク、もうひとつは精神的なリスクである。
山下先生はどちらかというと精神的な健康リスクを強調したかったのかなという、いい意味での捉え方もある。
精神的なものはもちろんだが、放射能から直接、どう守っていくかということが大切である。
大事なことは、国や政府がということではなくて、政治の主人公は国民一人ひとり、主権在民、国民があらゆる判断、行動の基準でなくてはならないということである。
国民がそういう時代に置かれている。
福島県民や二本松市民が置かれている。
そのことに対して、放射能から市民や県民や国民をどう守っていくかということが問われており、大事なことなのだと考えている。
そういう意味では、福島県のこのアドバイザーの発言の中には、これでいいのかとの思いと、このような話がなされたことについて、主催者としての責任を感じている。
科学者として、原理原則に基づいて、誰が言うからではなくて、一番大切な真実は何なのか、真実をやはり話していただきたい。
その真実に対して、どう対処していけばよいのか、どう身を守ったらよいのか、それらについては、国民は高い見識を有していると確信している。
だから、今大切なことは、都合の悪い情報はできるだけ出さないようにしようとか、隠蔽しようというような、そんな意思があるなしにかかわらず、国民からそのように取られる行為はすべきではない。
都合の悪い情報こそ、いち早く情報を公開して、国民とともに歩むということでなくてはならないと考えている。
3.11を境に、新たな安全・安心、経済尊重から人間尊重、人間優先、地球や環境と共生できる、持続可能な美しい、豊かな未来を築く。
その歴史の分水嶺であると判断している。
また、そうした歴史の分水嶺にしていかなくてはならない。
そうすることが、この地震や津波や放射能によって失われた多くの尊い命、また今も尚、行方不明になっている多くの方々、そういう犠牲になられた皆さんに応える唯一の道であると確信している。