・④ 排泄
ラットに1,2-ジクロロエタン 600 mg/m3(150 ppm)を6時間吸入暴露させた場合、あるいは、150 mg/kg体重を強制経口投与させた場合、非揮発性代謝物の排泄に有意な差はなかった。
いずれの経路においても、暴露48 時間後、総代謝物の84%以上が尿から排泄され、呼気からCO219 として7~8%が排泄され、糞便からは約2%が排泄された。
一方、約4%は、体内に残留した。
ラットとマウスに、放射標識した1,2-ジクロロエタン(各々100、150 mg/kg体重/日、溶媒:コーンオイル)を経口投与48時間後の代謝物の排泄のパターンは、ラットとマウスでは同様であった。
ラットでは、放射標識した8.2%がCO225 として、69.5%が排泄物(主に尿)として回収され、一方、マウスでは、それぞれ、18.2%と81.1%であった。
最終的な回収用量は、マウス(110.1%)よりもラット(96.3%)の方が少なかった。強制経口投与または吸入暴露した雄のOsborne-Mendel ラットで同定された主な尿中代謝物は、チオ二酢酸(67~68%)及びチオ二酢酸スルホキシド(26~29%)であり、速やかに排泄された
2)ヒトへの影響
ヒトにおける1,2-ジクロロエタンの摂取や吸入による死亡は、循環不全及び呼吸不全に起因する。
作業環境における反復暴露は、食欲不振や吐気、腹痛、粘膜刺激、肝・腎機能障害、急性影響で見られるような神経疾患と関連付けられた。
1 ppm 付近の1,2-ジクロロエタンに暴露された労働者に、リンパ球姉妹染色分体交換の頻度の増加が報告されている。
5 つのコホート研究及び脳腫瘍についての1 つのネステッドケースコントロール研究において、1,2-ジクロロエタンの潜在暴露を受けた労働者の発がんリスクが調べられた。
WHO では、リンパ及び造血器系がんの増加が3つの研究において、胃がんの増加が1つの研究において観察され、また、膵臓がんの増加が1つの研究において観察されたとしている。
いずれのコホート研究においても複数の物質による潜在暴露を受けた労働者が含まれていることから、1,2-ジクロロエタンに関連したリスクの増加を調べることはできなかった。