・3.2.小児脳腫瘍
対象者の基本的プロフィール(性別、年齢、母親の教育レベル(質問では、小学校と中学校を含めた就学年数で聞いており、12 年以下を高卒未満、13 年以上を短大・大学卒以上と定義した)、母親の妊娠中の喫煙歴、住居のタイプ(一戸建てあるいは集合住宅)、居住期間(%)、現住宅での居住年数)を症例対照間で比較した(表8)。母親の学歴が対照群でわずかに高い傾向を示したほかは、統計的に有意な差異を示すものはなかった。
また、出生時の体重および妊娠期間(出産週)にも有意な差は見られなかった(添付資料参照)。「寝室の磁界レベル」と他の指標との相関は高かった。
1 週間幾何平均磁界レベルではr=0.84(p<0.001)、1 週間昼間平均磁界レベルではr=0.83(p<0.001)、1 週間夜間平均磁界レベルではr=0.91(p<0.001)であった。
条件付きロジスティック回帰分析の結果は(表9)に示す通り、0.05μT 未満の磁界曝露群に比較し、0.4μT 以上の曝露群でリスクが有意に上昇する傾向が示された。
また、0.05μT と 0.3μT で3 群とした解析でも、0.05μT 未満の磁界曝露群に比較し0.3μT 以上でリスクの有意な上昇傾向が見られた。
すなわち、調整オッズ比は0.05-0.3μT で0.66 (0.27- 1.66)、0.3 μT 以上で6.56 (1.13-37.9)であった。
「寝室の磁界レベル」が0.3μT 以上であった5 名の症例と1 名の対照について、住居から最寄の高圧送電線までの距離を見ると、5 名の症例と1 名の対照のうち、3 名の症例だけが住居から100m 以内に高圧送電線があった(表10)。なお、居住地近隣の高圧送電線と脳腫瘍のリスクの上昇についての関連性は、住居から近傍の高圧送電線までの距離が100m 以上の群を参照カテゴリーとすると、50-100m では1.39 (0.32-5.82)、50m 以内では1.63 (0.28-10.69)であった。
小児白血病の項で述べたのと同様に、選択バイアスの可能性に関連して、調査依頼した対照者候補の参加の有無によって、居住地から高圧送電線までの距離に有意な差異は観察されなかった。
なお、性別、住居形態あるいは地域による電力周波数区分(50Hz か60Hz)による潜在的なリスクの修飾については、0.3μT 以上の対照者の数が少なかったために検討できなかった。
潜在的交絡因子が上記「寝室の磁界レベル」のリスクに影響しているかどうかについて、可能性のある交絡因子を条件付きロジスティック解析に共変数として投入して調べた。
結果は(表11)に示すように、0.4μT 以上のオッズ比には大きな変化が見られなかった。