・ 一方、5、6号機の敷地の高さは13mと1~4号機より高い。
それが、損害が軽微だったひとつの要因だが、津波で防波堤が破壊され、無防備な状態であるのは1~4号機と変わらない。
そこで、5、6号機では防波堤そのものの補修工事に入った。
福島第二原発と女川原発で重さ25tの消波ブロックを製造、運搬船で運び、クレーンで吊り上げ、構造計算のうえで積んでいく。現地の写真を見比べると、「冷温停止」しているはずの5、6号機の工事のほうが手厚いように見える。
それについては、地形の差による違いだとする指摘もあるが、少なくとも、どちらの工事も同じマグニチュード8クラスを想定した津波対策である。
それを片方は発表し、5、6号機については発表しなかったのは、「再稼働への備え」と指摘されることを嫌ったからだと考えられないか。
東電は、「工程表」に基づき、原子炉循環系の確保、海洋汚染防止のための遮蔽壁の設置、余震、津波対策などを同時並行で進め、そこには5、6号機向けの防波堤補修など再稼働へ向けた準備も含まれる。
「再稼働」について、東電広報部はこう説明する。
「発表はしていませんが、防波堤補修のために、消波ブロックの積み上げ工事を、9月末までをめどに行なっているのは事実です。1万個? いや、約3000個と聞いています。再稼働については、国や地域のご理解をいただきながら進めるもので、今、申し上げる段階ではありません。また、5、6号機も福島第二も大切な経営資源という認識です」
人も組織も簡単には変われない。
原発は今も東電にとって推進すべきものだし、ある程度は情報や資料を公開しているものの、「知らしむべからず」の基本姿勢に変わりはない。
その「ブレない東電」に政治がブレずに対応できるのか。
電力行政に関する「ポスト菅」の役割は大きい。
※SAPIO2011年9月14日号