日本のトンボを消す“浸透性農薬” | 化学物質過敏症 runのブログ

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・ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議より
http://www.kokumin-kaigi.org/kokumin03_53_07.html


・日本のトンボを消す“浸透性農薬”
―フィプロニルとイミダクロプリドの脅威―理事 水野 玲子

急速に姿を消すトンボ、それはなぜなのか。

開発による生息地の減少や産卵する水域の変化などが指摘される中で、10月に開催された生物多様性条約締結国会議(COP10)でほとんど話題にされなかったのが、農薬の危害である。

だが実は、新しく登場した浸透性農薬がトンボ減少に影響する可能性を指
摘した研究論文が、日本でいくつも発表されている。
そこまで危険性が疑われながら、どうしてトンボや水田に生息する無数の虫たちを守るための農薬規制が始まらないのか。

同じく10月にはNHKの「おはよう日本」で、特集“赤トンボはどこにいった?”
が放映されたが、その問題提起は消えてしまったのだろうか。
専門家は知っている―フィプロニルの危険性―
 イミダクロプリドとはネオニコチノイド系農薬の代表格であり、フィプロニルはフェニルピラゾール系という新しいタイプの農薬で、90年代後半に登場したものだ。
 「フィプロニルやイミダクロプリドを成分とする育苗箱施用殺虫剤の使用は、アキアカネ幼虫の大きな減少を招くことが示唆された」。

これは国立環境研究所の五箇公一ほか、神宮字寛、上田哲行らによって2009年に発表された論文(農業農村工学会)の引用である。

育苗箱施用とは、水田に苗を植える前の苗箱の段階で農薬を使用することだが、水田面積の大きい日本で、全国的に使用されている殺虫剤が赤トンボの代表であるアキアカネの減少に影響しているのではないかという疑問が、このように専門家によって提示されている。
 一方で、水田農薬が防除対象ではないトンボなどの節足動物にどう影響するかについて、トンボの例で調査した関東東山病害虫研究会報(2004)が発表されている。模擬水田において田水面のイミダクロプリド及びフィプロニルの動態を調査したところ、施用38日後に、イミダクロプリドは検出されなかったが、フィプロニルは高い濃度を維持していることが示されたという。
 この報告によれば、アキアカネは、殺虫剤イミダクロプリドやフィプロニルの影響で高い死亡率を示し、特にフィプロニルは48時間後の死亡率が何と100%に及んだ。開発企業の思惑通りに、この殺虫剤は水田に長期間に及び残り高い殺虫効果を維持し続けているようである。
 さらに環境省でも同様の研究成果が発表されている。

平成21年度ExTEND2005野生生物の生物学的知見研究課題、フィージビリティ・スタディ及びその研究成果概要(2)「アカトンボ減少傾向の把握とその原因究明」では、 「少なくとも石川県でアキアカネは1989年当時と比べて、ここ数年は1/100~1/200程度に減少していることが示された。

アキアカネの急激な減少が始まった時期は、全国のトンボ研究者に対するアンケートから、多くの研究者が2000年頃との印象を持っていることが明らかになった。

その頃から全国的に急速に普及した水稲の育苗箱施用殺虫剤、とりわけフィプロニルの使用が時期的に符合する要因として浮かび上がってきた」ことが記されている。
 このように危険性が提示されているにも関わらず、フィプロニルの規制あるいは使用量削減の話が政治の場で取り上げられないのは残念なことである。せっかく専門家たちが苦労して辿りついた農薬フィプロニルの危険性の証拠が、このように実際の施策に結びつくことなしに埋れていく。

殺虫殺菌剤とは殺虫剤と殺菌剤の複合剤で水稲用薬剤が多いが、農薬毒性の辞典(三省堂)によれば、2004年度の殺虫殺菌剤(製剤)の国内出荷量の第1位は、イミダクロプリドを含む製剤であるイミダクロプリド・カルプロパミド粒剤(1967t)、第3位がフィプロニル・フロベナゾール粒剤(1117t)であり、フィプロニルとイミダクロプリドを含有した製剤の利用が日本の水田で広がっている。フィプロニル粒剤を含有した製剤だけでも約70種類が、農薬の名称「プリンス」などの名前で登録されている。