・朝日5月23日 床・布団・畳・ドラム缶… 海のがれき「キリない」
震災からの復興を目指して海に出始めた漁船が、漁場のがれきに悩まされている。
潮の流れからか、いったん回収しても再びたまってしまう。
岩手県の底引き網漁船団は22日、初めて漁揚の一斉清掃に出た。
揚がったのは、住宅の床やトタン、ドラム缶……。「いつまで続くのか」と漁師は不安を募らせている。
漁船団が一斉清掃
長さ約6メートルの柱、布団、トタン、小型漁船の一部、畳、ドラム缶、タイヤ……。
岩手・宮古港に入った10隻のトロール船団から次々とがれきが陸揚げされた。
住宅の床(2メートル×4メートル)を回収した第38稲荷丸の長尾弘幸漁労長(41)は「がれきが網に入ると魚が傷ついて鮮度が落ちる。
網も破れる。
何年続くのか……」。
この日、初の一斉回収に出たのは宮古市と大船渡市の港を拠点とする75トンの底引き網漁船。県底曳網漁業協会の13隻のうち、2隻1組で漁をする12隻すべてが、両市の間の海岸から十数キ回沖合で8時間にわたって作業した。
手分けし、魚が逃げやすいようにファスナーを開けた網を数キロにわたって引いていった。
底引き綱漁船は、宮古市魚市場が再開した4月11日から、漁をしながら網にかかったがれきも回収している。
5月16日からは交代でがれき撤去に専従する船を割り当てた。
だが、回収した場所から再びがれきが揚がる状態だ。「潮の流れで移動するのか。
キリがない」と第1勝運丸の漁労長、三浦清之さん(48)は話す。
同協会の漁船は6月末まで、魚市揚が休みの日は全船一斉での回収を続けることにした。
金沢俊明会長(56)は「自分たちのことは自分たちでするしかない」。
分布調査に魚群探知機
環境省によると、岩手、宮城、福島の被災3県の陸上に残されたがれきは推計約2490万トン。海のどこにどれだけのがれきがあるのかは不明のままだ。
岩手県水産技術センターは、4月11日から漁業調査船の魚群探知機で漁揚のがれきを調べている。
国は、漁業者と専門業者が行う漁揚のがれき撤去に対し助成金を出している。
漁業者が自らがれきを撤去する場合は5人以上での活動に1人1日1万2100円が支払われ、船舶の使用料は大きさに応じて2万1千~9万2500円。
燃料代も助成される。
岩手県は来年3月をめどに全ての撤去を目指す。
宮城県は「できる限り早く撤去したい」としている。
(神田明美)