・ 追跡調査では過去にさかのぼり個人個人が受けた放射線量を総合的に推定する必要がある。
そのためのデータを政府は整理して出すべきだ。
個人への影響を評価するために、もっときめ細かい汚染マップ作りを進める必要もある。
詳細な汚染マップは、今後の被ばくを最小限に抑えるためにも欠かせない。
一人一人の被ばく状況を推定するには、記憶が消えないうちに行動の記録を書き留めてもらうことも大事だ。簡易線量計を住民に配り、被ばく線量を直接測る必要もあるだろう。
全身の計測装置による内部被ばくの実測も必要に応じて進めてほしい。
調査に当たって、住民によく説明し、同意を得るのは当然のことだ。強制するようなことがあってはならない。
個人情報の保護や、差別の防止にもよく配慮してもらいたい。精神的なケアも必要だ。
これまで、放射線による発がんリスクは広島・長崎やチェルノブイリ事故のデータが参考にされてきた。
しかし、今回の事故にはこれらと異なる面がある。後世のために科学的なデータを残すことは大事故を起こした日本の責務でもあるはずだ。
子どもには年1ミリシーベルト適用を」山内神戸大教授
「震災の復興を担う若い世代の健康を第一に考えなければ」と話す山内知也教授=神戸市東灘区深江南町
福島第1原発事故で放射線が検出された福島県内の小中学校について、国が屋外活動制限の可否を判断する目安とした年間の積算放射線量20ミリシーベルト。
「子どもが浴びる線量としては高すぎる」「放射線の専門家でもそこまでの被ばくは少ない」などの研究者の懸念に対し、国は暫定措置であることを理由に譲らない構えだ。
「子どもには年1ミリシーベルトを適用すべき」と4度にわたって国に申し入れている神戸大大学院海事科学研究科の山内知也教授(放射線計測学)に聞いた。
(黒川裕生)