建材とネオニコチノイドの問題 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議より
http://www.kokumin-kaigi.org/kokumin03_53_07.html

・建材とネオニコチノイドの問題
東京地方裁判所事調停委員 井上 雅雄
●新築住宅でシックハウス
シックハウス症候群は、1995年から社会的に問題になりました。

この問題に対して、厚生労働省は、13物質の室内濃度指針値を提示しました。

また、2003年の建築基準法の改正によって、ホルムアルデヒドの使用制限などが規制されました。さらに、トルエン・キシレン・エチルベンゼン・スチレンの4種類の揮発性有機化合物(4VOC)に対しては、日本接着剤工業会が2008年に自主管理規定を制定したのを筆頭に、官庁・学識経験者・業界が一丸となって自主管理制度を設ける取り組みを始めています。

この制度は、4VOCの濃度が厚生省指針値の6.8分の1(放散速度:μg/m2・h)以下であることが確認された各種建材・接着剤・断熱材・什器に対しては、工業会などの第三者機関が認証を与えたり、化学物質安全性データシート(MSDS)に「4VOC基準適合」という表示をすることを可能とするものです。

では、このような取り組みがなされてきているにもかかわらず、シックハウス症候群で住めない新築の住宅が増えてきたのはなぜなのでしょう? 以下に、考えられる理由を述べます。
理由① 合板や合板フローリング材などの木質建材に、ホルムアルデヒドキャッチャー剤(ユリヤ樹脂、アミン系化合物、ヒドラジン化合物など)(注1)を使用することにより、検査時に「ホルムアルデヒド等級」が一時的に変化して、本来であればF☆☆からF☆☆☆である製品をF☆☆☆☆製品として合格させている落とし穴があること。

その結果、建物使用時にホルムアルデヒドキャッチャー剤が劣化し、ホルムアルデヒドが再放出すること。
理由② 木質建材・断熱材・土壌処理剤として、日本木材保存協会に登録されている毒性の高い有機リン系薬剤に加えて、ネオニコチノイド系薬剤が増加傾向にあること。

特に、床の合板フローリング材に使われることが多く、床暖房使用や真夏の西日によって、高温で揮発したり、熱で劣化すること。
●増加するネオニコチノイド系薬剤 
筆者は、シックハウス症候群問題を専門とし、各官庁や業界の「建材からのVOC放散速度基準化研究会」「健康住宅研究会」などの委員会に14年間かかわり、また、某地方裁判所の民事調停委員、専門委員、鑑定人等の活動を通じて、多くのシックハウス患者の実態を調査してきました。

最近は、従来のホルムアルデヒドや有機溶剤などのVOCに加えて、新築の高級マンションや建売住宅の居住者が、ホルムアルデヒドやトルエンなどによる症状とは異なる新しい症状を訴えるようになりました。
住宅に使用される合板や木質建材として、従来から使用されていた「クロルピリホス」は、2003年以降使用が自粛されていますが、「フェニトロチオン」などの有機リン系薬剤は今も使用されています。

最近は、「フェニトロチオン」に替わるものとして、有機リン系薬剤より「安全である」と称して、クロチアニジン、アセタミプリドなどのネオニコチノイド系薬剤の登録が増えています。
表1と2に示すように、有機リン系薬剤やネオニれに課された①から⑤の規制に違反した場合には、3年以下の罰則もしくは100万円以下の罰金が科されます(法17条)。
Q 農薬取締法の登録制度とはどのような手続きで
しょうか?
A 農薬の登録手続きは、まず、製剤メーカーが個々の製剤ごとに登録申請を行います(法2条)。

このとき、製剤メーカーは、

①登録申請書(農薬の種類・性状・成分・適用病害虫の範囲及び使用方法等)、
②薬効、薬害、毒性、残留性に関する試験成績資料、
③農薬の見本を提出します。
申請を受けた農林水産省は、独立行政法人農林水産消費安全技術センターにその農薬を登録しても良いか否かの検査をするよう指示します。

指示を受けた農林水産消費安全技術センターは、製剤メーカーが提出した

②試験成績や

③農薬見本について総合的に検査を行い、その結果を農林水産大臣に報告します。この結果から、農林水産省はその農薬を登録するか判断します。

また、農林水産省と環境省は、当該農薬の登録保留基準を設定するために協議を行います。

この協議では、食品衛生法の残留農薬基準を定める厚生労働
省からの意見を聴取し、内閣府食品安全委員会などが審査します。
登録の要件を満たした農薬には、メーカーに対して、農林水産大臣からの「農薬登録票」が交付されます。

この農薬の登録は、3年間有効です。
平成20年3月において登録されている有効登録件数は、4,289件(有効成分数は526種類)です。

その内訳は、殺虫剤が約28%、殺菌剤が約22%、殺虫殺菌剤が約12%、除草剤が約31%、植物成長調整剤が約2%、その他が約5%となっています。
Q 農薬取締法にはどのような課題がありますか?
A 農薬取締法には、化学物質政策基本法との関係で、以下のような課題が挙げられます。
①除草剤やシロアリ防除剤について
農薬取締法は、農作物等に対する病害虫の防除を対象としています。

そのため、農作物を育てていない場所、例えば、空き地や道路など栽培植物のない場所の草を単に枯らす目的で使用する薬剤は、農薬と同一の成分を含み、同じように使用されるにもかかわらず、農薬取締法の対象外となります。
また、シロアリ防除剤や家庭用殺虫剤なども、農薬と同一の成分を含む薬剤があるにもかかわらず、農薬取締法の規制の対象外となります。

隣家でシロアリ防除剤が使用され、受動被爆により健康被害が生じた例が後を絶ちません。
人の健康被害防止や環境保全の必要性は、農作物を育てている場所か否かにかかわらず同じです。

このように薬剤の用途に応じて縦割りの法規制をしていると、法制度の狭間にある製品には十分な規制ができません。
人の健康や生態系に深刻な影響が生じる前に、同一の成分に着目して規制をする必要があるでしょう。
②ポストハーベスト用農薬について
農薬取締法は、農薬の製造・輸入・販売・使用段階までを規制対象としています。

そのため、収穫後に適用される殺菌剤・防かび剤等(ポストハーベスト用農薬)については、農薬取締法の対象外となります。

輸入野菜や果物には、ポストハーベスト用農薬が使われることがありますが、厚生労働省は、殺菌防腐剤(オルソフェニルフェノール、チアベンダゾール、イマザリル他)のみを食品衛生法に基づく食品添加物として扱い、殺虫剤などは残留農薬として扱うとの考えを示しています。

これでは、規制にばらつきを生じ十分に人の健康を守ることができないでしょう。
③残留農薬について
農薬取締法上、農作物に対する残留農薬は「作物に係る農薬登録保留基準」に基づき規制されます。

この農薬登録保留基準は、食品衛生法の残留基準と
同じく、ADIをもとに設定されます。

ADIとは、当該農薬を一生涯に渡って仮に毎日摂取し続けたとしても危害を及ぼさないと見なせる許容1日摂取量をいいます。

しかし、このADIの評価については、根拠となる毒性データの公開が不十分で審査経過が一部しか明らかにされていない点が指摘されています。

また、市場に流通している食品に対して残留農薬の検査が行われていますが、その残留農薬検査の件数は、流通する食品の数量に比べ圧倒的に少ないため、農作物に対する残留農薬のチェックが十分にできていないとの指摘もあります。
残留農薬による健康被害防止のためにも、各法制度を超えた包括的な規制が必要です。(執筆:KI