・(4)全体について
前年度同様、子供の誤飲事故は、午後5時から午後10時の間の家族の団らんの時間帯に頻発している。保護者が近くにいる・いないに関わらず、乳幼児は、身の回りのものを分別なく口に入れてしまうので、乳幼児のいる家庭では、乳幼児の手の届く範囲には極力物を置かないようにすることが必要である。
特に、歩き始めた子供は行動範囲が広がることから注意を要する。
また、食品類であっても、状況次第では非常に危険なものになるということを保護者は認識し、子供の周囲の環境に気を付けなければならない。
さらに前年度同様、兄弟・姉妹に誤飲事故歴があったり、患児自身に誤飲事故歴があったりと、同一家庭内で繰り返し誤飲事故が発生している事例が多いことから、このような家庭では、保護者の認識や生活習慣にも問題があると思われるので、保護者は意識を向上させ、生活習慣の改善に努力することが必要である。
誤飲時の応急処置は、症状の軽減や重篤な症状の発現の防止に役立つので重要な行為である。
しかし、保護者が誤った処置をしている事例もみられていることから、応急処置に関して正しい知識を持つことが重要である。
なお、平成8年度には、(財)日本中毒情報センターにより、小児の誤飲事故防止に係る啓発パンフレットが作成され、全国の保健所あて送付されている。
おわりに
本モニター報告は平成7年度で17回目となったが、報告件数において上位を占める家庭用品の種類は、ここ数年ほとんど変動していない。
しかし、そうした中でも、皮膚科領域における装飾品による金属アレルギーの増加やスポーツ用品による皮膚障害の増加など時代に応じた変化が現れている。
現在のモニター報告は、治療を目的に来院する患者から原因と思われる家庭用品について情報を収集するシステムであるため、その家庭用品に含まれる化学物質を特定することは、必ずしも容易ではない。
しかしながら、時代に応じて快適な生活を求める消費者ニーズに応えるため、新しい化学物質や素材が家庭用品に次々と使用されてきていることから、常にその情報を入手し、新たに生じる問題点を早急に発見することが必要である。
また、最近では、抗菌剤を使用した家庭用品や、コンパクト洗剤などの新製品が数多く出回っていることから、その安全性については引き続き注目していく必要がある。
家庭用品による健康被害を未然に防止するためには、消費者が使用上の注意をよく読み、製品情報に注意するとともに、自己の体質を認識したり、子供が誤飲しないように周囲の環境に配慮することが必要である。
また、事業者は、製造物責任法の施行に伴い、製品の供給に先立って安全性の確認を行いより安全な製品の供給に努めるとともに、販売時には製品の適切な使用方法について、消費者に確実に伝えるよう努めることが必要である。