・出典;化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
・ナノの話(3) 労働者の安全確保
厚労省 ナノ暴露予防的対策報告書の概要と
労働安全衛生法の問題点
1.職場でのナノ物質有害影響の懸念
中国の7人の若い女性が、ナノ粒子を使用した塗料のスプレー工程で適切な防護なしに数か月働いた後に、肋膜胸水流出、肺繊維症及び肋膜肉芽腫を発症し、そのうち2人が死亡したと、中国の研究者らが『欧州呼吸器ジャーナル・オンライン』に2009年8月19日に発表しました。
作業場の換気装置が数か月前から故障していたこと、防護具はガーゼのマスクだけであったことなど、労働安全衛生の基本に問題があるのですが、被害者全ての肺細胞からナノ粒子が検出されており、著者らはこの事故は換気の悪さに起因する塗料ベーパーによる単なる中毒が原因ではなく、ナノ粒子の本質的な毒性によって引き起こされたものであると主張しています。
2008年には多層カーボン・ナノチューブがマウスに中皮腫を引き起こす可能性を示す二つの研究報告が発表されました。
ひとつは2008年2月に『ジャーナル・オブ・トキシコロジカル・サイエンス』に発表された日本の国立医薬品食品衛生研究所の研究者らの報告、もうひとつは2008年5月に『ネイチャー・ナノテクノロジー』に発表された英エジンバラ大学の研究者らの報告です。
2.厚労省、環境省、経産省のナノ物質に関わる安全対策の検討と報告書
日本では、上記カーボン・ナノチューブの報告発表までは、ナノ物質の安全管理/対策についての方針をほとんど示してこなかった厚労省/環境省/経産省は、急遽、ナノ物質の健康、安全、環境(HSE)に及ぼす影響と対策についての検討会を各省個別に開催し、それぞれが報告書やガイドラインを年度末の2009年3月31日までに発表しました。
本稿では、厚労省2008年11月26日発表「ヒトに対する有害性が明らかでない化学物質に対する労働者ばく露の予防的対策に関する検討会報告書(ナノマテリアルについて)」の概要を紹介するとともに、現行の労働安全衛生法の下でのナノ管理の大きな問題点を提起し、改善提案を示します。