・◆医師の理解が得られるか
西洋医学では対症療法が多い中で、基から体調を整えるという治療に対して、即効性の薬に慣れている中で、医者の理解が得られるかどうか分からない。
不定愁訴(たくさんの症状を訴える)に対して、適当な薬がない。精神科に行きなさいというのが一般的な対応である。
というのは、今、病院の経営が厳しくて、内科医でも、1日30~40名の診療(1人の診療には最長でも10分)をしている。
また、発展途上の病気のために、教科書がない。
例えば、アレルギーは有史以来ある病気なのに、科学的に証明されたのはつい最近のことであるように時間がかかる。
化学物質過敏症では、結果として精神症状を伴いやすいが、原因として精神疾患に入れられてしまいやすい。
それは、この病気の患者は時間がかかるということからも、起こりやすい。
さらには、病院内で気分が悪くなる患者にどう対応するか。
病院内の空気汚染の認識が、病院側にない。
また、消毒薬などの危険性の認識がない。これは保健所が指導するので、置かざるをえないという面もある。
◆精神疾患との境界線のあいまいさをどうするか
近縁疾患には、アレルギー(皮膚、呼吸器、食物)、慢性疲労症候群、線維筋痛症、上気道過敏、うつ、不安障害がある。うつ、不安障害との境界線があいまいである。
一番問題なのは、不安障害=神経症で、ICD10(国際病名分類)では、神経性障害・ストレス関連障害・及び身体表現性障害の項目に分類されている。
ここには、全身性不安障害、パニック障害、恐怖症性不安障害、強迫性障害、解離性障害、身体表現性障害、適応障害が入っている。
化学物質過敏症の患者さんの症状だけで見ると、この分類に押し込めることができる。精神科の医師たちに化学物質過敏症を理解してもらうには、まだ時間がかかるだろう。
うつ病に多い症状10項目(多い順)(更井 俊介 精神神経学雑誌 1979年):
1.睡眠障害、2.疲労・倦怠感、3.食欲不振、4.頭重・頭痛、5.性欲減退、6.下痢・便秘、7.口渇、8.体重減少、9.めまい、10.月経異常
化学物質過敏症患者の症状(石川先生 平成10年):
不眠・過眠、集中力低下、思考力低下、倦怠感、頭痛、肩凝り、興奮しやすい、筋肉痛、健忘、微熱、便秘・下痢・腹痛、興奮しやすい、うつ、視覚異常感
この二つを比べると、大変似ている。だから、結果として出てくる症状だけを見て診断するのでは困る。
大脳辺縁系(大脳皮質と脳幹部の中間の部分)がCSには一番関与しているのではないかと言われている。
その中でも、特に海馬が一番大事ではないか。
ところが、うつ病の場合も海馬がやられる。
海馬の神経繊維のネットワークの育ちには、女性ホルモンが関与している。
海馬は記憶と情緒と臭いの中枢であり、女性がそういう面に敏感であるというのは、説明できる。
「うつ」をきたす主な疾患には、うつ病、気分変調症(軽度のうつが長期に続く、不満や他罰性が出てくる)、双極性障害、適応障害があり、こういうものとも混同されやすい。