・◆北里での臨床検査
北里では、以下のような臨床検査を実施して、SHS・CSの診断をしている。
①採血、 ②採尿、③心電図、④視覚空間周波数検査MTF、⑤瞳孔反応検査、⑥眼球運動検査、⑦重心動揺検査、⑧免疫系検査、⑨内分泌系検査、⑩質問・問診票(QEESI)。
必要に応じて、ポジトロンCT、MRI検査を加える。我々は、現在、患者さんを早く発見すれば治せると自負している。
1998年と2004年の北里のデータを見ると、SHSの数は減少しているが、CSは減少せず、精神疾患群・その他の群で患者数が増加している。
日本では、CS、SHSは終わったという考えがある。
しかし、CSの発生は今も変わっていないし、前よりも症状が複雑で難しくなっている。化学物質ですでに発症した患者、今後発症するであろう患者を早期に発見し、治療することが急務である。
◆日本でのCS研究 現在の問題点
患者を診断・治療する医師数不足、周囲の医師の無関心、CS研究者に対する一部省庁の無視があり、第一線でフロントに立つ若手医師がジレンマに陥る事が多い。外来診察では、化学物質過敏症診断に一人最低新患で40分前後の時間が必要。北里臨床環境医学センターでは、医師1人1日8人が最高、それ以上は医療従事者の疲労で不可能。
患者治療に必要な施設:ガス負荷試験、2重盲検法等を施行する清浄空気の、クリーンル-ムが必要、現在北里ではそれが費用過剰と採算がとれないとの理由で閉鎖されている。
装置維持:フィルター交換、電気代、維持費用捻出のための予算が不足、1年間約1千万円近い赤字で診療費からの捻出は不可能。
この様な理由で、経営困難から診療規模縮小を余儀なくされた。
これは北里大だけの問題ではない。
この状況は国立、公立、私立を問わない。
診療・治療室の確保、医師、ナース、検査士雇用のための費用捻出が患者診断、治療に必須であるが、現在の各診療施設の医療収入のみでは、すべて、赤字だ。
私立、一般開業医師ではさらに辛く、診察も不可能とし、CSを扱う医師がきわめて現れにくいのが現状である。
しかし、北里の診察を学びにくる若手医師たちも多い。
今後は大局的な立場から、改革が必要で、医師、パラメジカル(医師以外の医療従事者)、患者救済のための大幅な援助が必要で、保険が通った事だけで、浮かれていられない深刻な悩みが病院、医師側、医療従事者にある事を絶対に忘れないでほしい。
◆医師側から望むこと
SHSについては、目途がつきつつある。CSについては、これを心因性として排除しようとする圧力がある。
それは、当分続くであろう。USAでもデータがない、二重盲検検査が不明確、など低いレベルの議論の繰返しが当分の間、日本でも大合唱されるであろう。彼等の反論は日、米、欧州ともに"ケチ"をつけるだけ。詳しい症例提示(case control study)、長期にわたる経過観察データさえも欠如したままで反対している。
◆今後の医療問題
患者治療に真剣に対応している医師達、看護士、検査士達も大変な苦労の下で、CS診療を行っている。精神的、肉体的、ストレスなど枚挙に暇がない。病院外来、検査室(クリーンルームルーム)の閉鎖、検査室スペースの縮小、人員縮小、若手医師補充不可能、その他多くの難題が各現場にあり、じわじわと見えない締め付けが感じられる。
この際、抜本的な手を打つ必要がある。皆さんの結束が必要だ。
※注 厚生労働科学研究成果ベース http://mhlwgrants.niph.go.jp/index.html
「微量化学物質」で検索すると見られる。