・事例 【原因製品:殺虫剤(スプレータイプ)】 患者:19歳・女性 状況:室内に放置していた食品に虫が発生し、エアゾール式の殺虫剤を大量に使用した。
その部屋にいたところ、2時間後より症状が出現したので近医を受診し、いったんは帰宅したが、2日経っても症状が続くので再受診した。 症状:頻呼吸、頻脈、血圧低下、咽頭痛、眼の痛み、流涙、発熱 処置・転帰:輸液、抗菌薬・鎮痛薬投与、12日間に数回通院
事例【原因製品:防虫剤(パラジクロルベンゼン)】 患者:48歳・女性 状況:引き出しを開けた際、1年ほど前から使用していた防虫剤の臭いがきつく、症状が出現した。
使用量は用量どおりである。 症状:鼻・眼の違和感 処置・転帰:新鮮な空気下に移動、家庭内で経過観察
事例【原因製品:カビ取り用洗浄剤(塩素系)】 患者:73歳・男性 状況:浴室でポンプ式スプレータイプのカビ取り剤を使用して1時間掃除を行った。
直後より症状が出現し、自宅で経過観察を行っていたが治まらないので受診した。作業中、換気は行っていたがマスクは着用していなかった。
症状:喉の違和感、悪心、嘔吐、頭痛 処置・転帰:輸液、入院4日
事例【原因製品:園芸用殺虫剤(液体タイプ)】 患者:47歳・男性状況 近所の人が塀より高いところに殺虫剤を散布しているところを通りかかり、霧状の液が顔にかかった。 症状:眼・皮膚の違和感、角膜の炎症 処置・転帰:洗眼、医療機関で洗眼、点眼薬処方 転帰:不明
事例【原因製品:防水スプレー】 患者:59歳 男性 状況:換気をせずに室内で靴にエアゾール式の防水剤を使用した。
その後症状が出現し、2日後に受診した。
症状:悪心、倦怠感、発熱 処置・転帰:消炎薬・解熱薬・制吐薬投与、転院(転帰不明)
--------------------------------------------------------------------------------
報告件数推移を見ると、全体数はあまり変わらず、小児の誤飲事故は減少している中で、吸入事故は増え続けています。
家庭内に様々なスプレー式製品が入り込んでいる実態を反映していると思います。
また、皮膚障害は減少傾向にあったのが、装飾品を中心に増加傾向にあり、注意が必要です。
事例報告のいくつかを紹介しましたが、担当医師のコメント(省略)が書かれている中に、家庭内にタバコを持ち込まない、人体に無害な製品開発をしてほしいなどの言葉がありました。
メーカーも国も、"正しく使えば安全"という立場で次から次へと様々な製品を出していますが、家庭内で使う製品は、基本的に安全性の確かなもの(リスクではなく、ハザードで安全性が確認されたもの)であるべきです。
(安間節子)