教科書、教材からの化学物質 | 化学物質過敏症 runのブログ

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化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

シックスクールの原因で一般的に知られているのは、校舎に使われた建材等から発生する化学物質である。
しかし、子どもたちが学校環境において、気分が悪くなると感じる原因はそれだけではない。

床のワックス・本棚・コンピューター等の設備、塗装・ペンキ塗り等の工事、マジック・教科書等の教材・文具、他人の香水・プールの塩素・排気ガス等の学校生活等々(子どもの健康と環境を守る会「シックスクール調査集計報告」より)があげられる。

○その中の教材について
 「子どもたちが気分が悪くなると感じる主な教材」の中から、教科書、絵の具・墨液、ニス・ラッカー及び接着剤から放散する化学物質を調査した。

○教材を調査した結果
 1 教科書から、トルエンや2-ブトキシエタノール(表面加工材)が放散していた。
 2 絵の具・墨液から、ホルムアルデヒドまたはフェノール(防腐・防カビ剤として添加)が放散していた。
 3 ニス・ラッカーの中には、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンを含む製品があった。
 4 接着剤の中には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドを放散する製品があった。

☆気分が悪くなると感じる教材からは何らかの化学物質が発生しており、その中には有害な物質も含まれていた。
 したがって、使用の際には吸引暴露・接触暴露を軽減する措置を取るとともに、使用環境(主に換気)にも注意する必要がある。


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1 教科書

○調査方法(表1:測定教科書の概要、図1:チャンバー法の概要)
1. 教科書から放散する化学物質の測定
 チャンバーの中に未使用の小学生用教科書を開いて入れ、チャンバー内の空気を吸引採取し、主に検出されたVOC類14物質についての放散速度を算出した。

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○調査結果(図2:教科書1冊当りの放散速度)
1. 調査した教科書の全てからトルエンを検出した。
2. 放散速度合計値が最大だった教科書Gについて、トルエン等の芳香族炭化水素は少ない事が分かった。また、放散速度の70%を占める2-ブトキシエタノールはプレスニスコートの造膜剤(表面加工材)に由来すると推測された。

※「教科書から放散される揮発性有機化合物」より(大貫 文他:H16年度地方衛生研究所全国協議会関東甲信静支部・理化学研究会)

2 絵の具・墨液

・○調査方法(表2:調査絵具の概要、図3:チャンバー法の構成図)
1. 絵具から放散する化学物質の測定
 絵具1.0g(墨液)を原液のままガラス板に塗布(50cm2)した試験体を、チャンバー内に設置。出口空気を採取し、VOC及びアルデヒド類を測定した。
2. 教室内空気中濃度変化の予測
 得られたチャンバー内化学物質濃度より、初期放散速度及び一次減衰定数を算出。これらを用い、小学校教室内で絵具等を使用した場合の、教室内空気中化学物質濃度変化を予測した。予測時に想定した教室内環境及び使用絵具の条件を以下に示した。
3. 絵具に含まれる化学物質量の測定
 絵具0.1gにアセトニトリルまたはメタノール1mLを加え、超音波で10分間抽出・遠心分離し、上清をアルデヒド類またはVOC類分析用カートリッジに添加し、分析した。
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・○調査結果(図4:チャンバー内化学物質濃度、図5:教室内空気中物質濃度変化の予測、表3:各試料中の物質含有量)
1. 放散が認められた主な物質は、絵具1、2からはホルムアルデヒド、絵具3~5及び墨液からはフェノールであった。ホルムアルデヒドのチャンバー内最大濃度は絵具1の約240μg/m3(塗布後1時間)、フェノールについては墨液の約1,600μg/m3(塗布後8時間)、次いで絵具3の約670μg/m3(塗布後7時間)であった(図4)。

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2. 教室内濃度の変化を予測した結果、ホルムアルデヒドの増加濃度が最大になるのは絵具1を使用した場合の7.1μg/m3(作業開始1時間45分後)、フェノールの場合は絵具3を使用した時の12.3μg/m3(2時間30分後)であった(図5)。
3. 絵具1g当り、ホルムアルデヒドは8.0~110μg、フェノールは580~3,460μg含まれており、フェノールの方が数十倍多い事が分かった(表3)。


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