薬物療法 [編集]覚醒水準を引き上げることで症状を防ごうという理由で、治療には中枢神経興奮薬が用いられる。
対症療法であり根治を目指すものではない。
日本では一般に、塩酸メチルフェニデート(商品名「リタリン」)が使用されていたが、ADHDへの使用は認可されていなかったため、二次障害のうつ病に対して処方するという形をとっていた。
しかし、2007年10月、リタリンの適応症からうつ病が削除され[9]、代わってメチルフェニデートの徐放剤(商品名「コンサータ」)が小児期におけるADHDの適応薬として認可された[10]。
また、2009年4月にノルアドレナリンの再取り込みを阻害作用を有するアトモキセチン塩酸塩製剤(商品名「ストラテラ」)が認可されたが、本剤も承認範囲は小児に限定されており、2009年6月現在、成人に対しては処方可能な治療薬は存在していない[11]。
ただし、成人向けにアトモキセチン塩酸塩の治験は行われてきており、2009年9月現在インターネット上での被験者の公募も行われている[12]。
治験が順調に進展すれば、数年以内に成人への処方も認可される可能性が大きい。
塩酸メチルフェニデートは覚醒剤として機能するため、長期摂取による依存性や何らかの副作用が懸念されるが、処方に従っている限り薬剤耐性はつきにくく依存の心配を含めて重い副作用は報告されていないとされている。実際、ADHDの場合止められなくなるどころか飲み忘れて貯めてしまうことがよく見受けられる。
特に思春期以前の児童に関しての投薬も依存の危険はないとされるが、米国ではあまりに安易に幼年児にも処方するため、2~3歳児への処方では実際にはADHDではないケースがかなり含まれているのではとの懸念がなされている[1]。
メチルフェニデートは前頭前野皮質のノルエピネフリン・トランスポーター(NET)に作用し細胞外ドーパミンの濃度が上昇、治療効果をもたらすという仮説がある。[13]。
リタリンは、脳内のドーパミン・トランスポーターとノルアドレナリン・トランスポーターに作用する事で、ドーパミンやノルアドレナリン量を増やす。
セロトニン・トランスポーターにはほとんど作用しない[1]。
一部にはペモリン(薬剤名ベタナミン錠)が効果を持つ場合もあるが、強い肝臓への副作用が懸念される。 効能自体も多くのADHD患者に効果がなかったり、十分でないといった問題があり代替薬とは言えない状況である。
ADHDの症状を緩和させる為に、カフェイン(コーヒー等の摂取)を補助的に使用している人もいるが、当然のことながら薬物の代替となるほどの効果はない。
ベタナミン錠もリタリンと同じく規制対象になる可能性が高く、ADHD患者、特に成人期のADHD患者を取り巻く治療薬問題は大変に厳しいものになっている。ベタナミン錠は肝臓への負担が大きいため、アメリカでは製造中止になっている。
精神医療における大麻の有効性が広く認知されるようになった最近では、医療大麻のADHDに対する有効性について現在多数の研究が行われている。[14]規制の緩和された米国やカナダ、英国等で精神科医が医療大麻や大麻の有効成分であるテトラヒドロカンナビノール系製剤を患者に処方する場合が増えており、中枢神経興奮薬に比べ副作用や依存の少ない有力な代替薬として使用されている[15]。