・昨年5月、マツクイムシ防除の農薬空中散布の際に1100人以上が目の痛みなどを訴えた出雲市は、来年度以降、当分の間、空中散布を中止することを決めた。今後は松に直接、薬剤を注入する「樹幹注入」を中心に防除する。県内では他に3市町が空散していたが、来年度について、松江市は中止、隠岐の島町は実施を決め、雲南市は検討中という。
今年度の空散面積は出雲市が1689ヘクタール、松江市153ヘクタール、雲南市59ヘクタール、隠岐の島町88ヘクタールの予定だった。
出雲市の事態を受け、他の3市町も急きょ空散を中止した。
出雲市は昨年6月、学識経験者ら11人による原因調査委員会を発足させた。委員会は9月、「健康被害の原因は特定できないが、農薬空中散布が原因である可能性を否定できない」とする報告書を市に提出した。
これを受けて、市は、学識経験者ら26人が来年度以降のマツクイムシ対策を検討する防除検討会議を設置した。
同会議は12月、市に空中散布以外の方法を提言する報告書を提出していた。
出雲市では庁内で来年度以降の防除方法を検討した結果、「空中散布が原因である可能性が否定されない以上、現行の薬剤を使った空散はできない」と結論した。
来年度は樹幹注入を中心にし、今年度予算の8800万円を大きく上回る2億円を計上する予定。
マツクイムシの被害を受けた木を切り倒して薬剤処理する「伐倒駆除」も緊急雇用対策を含めて広げるという。
一方、他の3市町のうち、現在検討中の雲南市は「地元からの実施の要望は強いが、出雲市がはっきりと空散が原因とは関係ないと結論づけていない以上、やりにくい」と悩む。
隠岐の島町は「急峻(きゅうしゅん)な場所では空散以外に手だてがない」として、来年度の散布を決めた。
3市町とも今後は樹幹注入や伐倒駆除に力を入れていきたいとしているが、経費が膨大にかかるうえ、人が入れない場所は処理できない。
松江市の担当者は「今後は海水浴場がある島根町の桂島5・5ヘクタールを対象に樹幹注入する。せめてそこの松だけでも守りたい」と話していた。
また、県は、市町村に提示する空中散布マニュアルを近く改訂する。
より散布か所に近い場所で風速測定することや、通学時間帯を外すことなどの項目を新たに追加するという。
2009年2月7日 読売新聞