・3.公害問題が持ち上がっている
大々的に農薬をふりまけば、周辺の住民や生態系に影響を及ぼすのが避けられないだろう。
無人ヘリコプターは5メートル以内の高度で使用することになっているが、霧状の農薬が、ローターによって巻き起こされる気流で舞い上がり、風に乗って近隣の住宅地域にも飛び散ることも大いにありうる。
そんな農薬は、人にだけでなく、自然の生き物・鳥獣にも害を与えてしまうだろう。
病原菌・害虫は、農薬に耐性を獲得する傾向があるから、それに伴って、より強い農薬が使われるようになっている。
無人ヘリコプターは、いまや神奈川、大阪、沖縄を除く44都道府県で使われているというから、問題も広がっている。
(私は神奈川に住んでいてよかった。)
有機リン剤の飛散が周辺住民の健康に害を与えているという疑いのある実例が報告されている。
有機リン系農薬の散布を自粛したところ、過敏症患者が大幅に減ったという群馬県の一例は、農薬の関連性が高いということだろう。
しかし、周辺住民が悩まされるそれらの症状は、それが農薬の影響なのかがはっきり分らないような症状でもある。
農家収入の安定化ために農薬散布を推し進めたい政府は、そんな住民の声など、不定愁訴にしか聞こえないようだ。相当に末期的な症状が住民の間に現れないと、政府は「公害」という、政府やメーカーにとって不都合な言葉を使おうとしないだろう。
4. 今後の対応
農薬を空中で散布する以外に、効果的に、病害虫を防ぐ方法はないものだろうか。
・飛び散らないように地上レベルで散布するロボットを用いることが有効かもしれない。
・農薬を使わなかった昔ながらの農法に立ち返ることも一案だろう。その場合、虫食い跡のある農産物を平気で食べるような消費者の意識改革も必要だ。農産物に虫がついていることが、農薬を使っていない、あるいは残留農薬が少ないという証明だろう。
・あるいは、生産者側が病害虫に強い品種を開発し、育成することだ。
(遺伝子組み換え技術を使えば比較的容易に開発できる。現に、その目的で遺伝子組み換え作物が広く世界的に栽培されつつある……)
*1.高性能の機種では、軍事の偵察用にも転用できる。それを農業用仕様と偽って中国に不正輸出した事件が起きている。