・原因ナルコレプシーの病因としてオレキシンという物質の欠乏との関連が注目されている。
オレキシンは視床下部から分泌される神経伝達物質で、1998年に桜井武(現・金沢大学大学院医学系研究科教授)と柳沢正史(テキサス大学サウスウェスタン医学センター教授)らのグループによって発見された[5]。
オレキシン遺伝子を破壊したマウスにはナルコレプシー症状が現れることが明らかになっている[6]。
また、任意のヒトのナルコレプシー患者においても視床下部のオレキシンを作る神経細胞が消滅していることが明らかにされている[7]。
90%以上の患者で髄液中のオレキシンが検出されないことも報告されている。さらに、オレキシン神経細胞を破壊し人為的にナルコレプシーを引き起こしたマウス[8]に、オレキシン遺伝子を導入したり、脳内にオレキシンを投与することでナルコレプシー症状が改善されることも明らかにされた[9]。
症状睡眠発作
日中、突然に耐え難い眠気に襲われるという発作。
情動脱力発作(カタプレキシー)
笑い、喜び、あるいは自尊心がくすぐられるなど感情が昂ぶった際、突然に抗重力筋が脱力するという発作。
全身にわたり、倒れてしまう発作のほか、膝の力が抜けてしまう、呂律がまわらなくなる、などの部分発作もある。
入眠時幻覚
睡眠発作により睡眠に陥った際、及び夜間の入眠時に現実感の強い幻覚を見ることがある。
これは統合失調症などで見られる真性幻覚とは異なり入眠直後にレム睡眠状態になるために非常に現実感を伴った夢をみている状態であると考えられている。
寝入り際に幽霊を見たといった類の心霊現象を訴えることがあるが、これも入眠時幻覚によって見ることができる。
睡眠麻痺
いわゆる金縛りと呼ばれる症状。開眼し意識はあるものの随意筋を動かすことができない状態。
以上の4症状は4大症状と呼ばれる。うち、下の3つはREM睡眠と密接に関連しており、REM関連症状と呼ばれることがある。
自動症
眠った感覚がないにもかかわらず、直前に行った行為の記憶がない状態。逆に言えば無意識に寝てしまい、寝ながら行為を続けている状態。
中途覚醒、熟睡困難
夜間就寝中に頻回に目が覚めたり、幻覚や睡眠麻痺があること、また、睡眠構築の乱れもあるため熟睡が困難である。
治療中枢神経刺激薬を使用することで眠気を抑制することができ、塩酸メチルフェニデート・モダフィニル・ペモリンが主に使用されている。また、三環系抗うつ薬やSSRI、SNRIの服用により情動脱力発作や睡眠麻痺の頻度を低減させることが期待できる。
4-Hydroxybutylate(GHB)も治療に使われることがあった。
上述のオレキシンがナルコレプシーなどの睡眠障害に対する新規治療薬開発につながることが期待される。
現在の主流は、モディオダールという副作用の少ないナルコレプシー専用の治療薬が国内で承認され最大30日分まで[10]処方が可能である。
一錠100mgの有効成分を含み、症状の重症度に応じて1~3錠までが医師により決められる。
即効性があり、朝食後に一回飲むだけで約8時間効果が持続するが、血中濃度の低下が早いため毎日服用する必要がある。
また新薬のため薬価が高く、保険本人負担料が1日3錠で2週間分の場合、約¥5,380となり経済的な負担も無視できない。