・表Ⅱ-1-2 揮発性有機化合物の発生源となる可能性があるもの
ホルムアルデヒド 机・いす等、ビニル壁紙、パーティクルボード、フローリング、断熱材等(合板や内装材等の接着剤)
トルエン 美術用品、油性ニス、樹脂系接着剤、ワックス溶剤、可塑剤、アンチノッキング剤等
キシレン 油性ペイント、樹脂塗料、ワックス溶剤、可塑剤
パラジクロロベンゼン 消臭剤、芳香剤、防虫剤等
エチルベンゼン 接着剤や塗料の溶剤及び希釈剤
スチレン 樹脂塗料等に含まれる高分子化合物の原料
ア ホルムアルデヒド
ホルムアルデヒドは、無色で刺激臭を有し、常温ではガス体である。これは、空気と比較してほぼ同じ重さである。
空気との混合気体も同様である。
水によく溶け、35~37%の水溶液はホルマリンとして知られている。
室内空気汚染の主な原因として推定されるのは、合板や内装材等の接着剤として使用されているユリア系、メラミン系、フェノール系等の接着剤からの放散(未反応物又は分解物)である。
建材だけでなく、これらを使用した家具類も同様である(木製家具、壁紙、カーペット等)。
また、喫煙や石油、ガスを用い暖房器具の使用によっても発生する可能性がある。
健康影響では、短期暴露で0.08ppm ぐらいに臭いの検知閾いき値があるとされ、これが最も低い濃度での影響である。0.4ppm ぐらいでは目の刺激、0.5ppm で喉の炎症閾いき値があるとされる。
国際がん研究機関(IARC)の発がん性評価では、「ヒトに対して発がん性がある」物質として分類されている。
イ トルエン
トルエンは、無色でベンゼン様の芳香をもち、常温では可燃性の液体で、揮発性は高いが、空気より重いため、高濃度の蒸気は低部に滞留する性質があると考えられる。
接着剤や塗料の溶剤及び希釈剤等として、通常は他の溶剤と混合して用いられる。室内空気汚染の主な原因として推定されるのは、内装材等の施工用接着剤、塗料等からの放散である。
また、建材だけでなく、これらを使用した家具類も同様である。
トルエンは、0.48ppm ぐらいに臭いの検知閾いき値がある。
高濃度の短期暴露で目や気道に刺激があり、精神錯乱、疲労、吐き気等中枢神経系に影響を与えることがあるが、発がん性の指摘はない。
ウ キシレン
キシレンは、無色でベンゼン様の芳香をもち、常温では可燃性の液体で、揮発性は高いが、空気より重い。
接着剤や塗料の溶剤及び希釈剤等として、通常は他の溶剤と混合して用いられる。
キシレンの市販品は、通常混合キシレンとして販売され、エチルベンゼンも含まれている。
トルエンと同様、ガソリンのアンチノッキング剤として添加され、ガソリン臭の原因物質である。
室内空気汚染の主な原因として推定されるのは、内装材等の施工用接着剤、塗料等からの放散である。
建材だけでなく、これらを使用した家具類も同様である。健康影響では、トル
エンと同様で、発がん性の指摘はない。
エ パラジクロロベンゼン
パラジクロロベンゼンは、通常、無色又は白色の結晶で特有の刺激臭を有し、常温で昇華する。
空気より重いため、蒸気は低部に滞留する性質がある。家庭内では衣類の防虫剤やトイレの消臭・芳香剤等として使用されている。健康影響では、15~30ppm で臭気を感じ、80~160ppm では大部分のヒトが目や鼻に痛みを感じる。
オ エチルベンゼン
エチルベンゼンは、無色で特有の芳香をもち、常温では可燃性の液体である。揮発性は高いが、空気より重いため、低部に滞留する性質があると考えられる。
エチルベンゼンは、接着剤や塗料の溶剤及び希釈剤等として、また燃料油に混和して、通常は他の溶剤と混合して用いられる。
したがって、室内空気汚染の主な原因として推定されるのは、合板や内装材等の接着剤、塗料等からの放散であり、建材だけでなくこれらを使用
した家具類も同様である。
カ スチレン
スチレンは、無色ないし黄色を帯びた特徴的な臭気(都市ガスのような臭い)を有し、常温では油状の液体である。
揮発性は高いが、空気より重いため、高濃度の蒸気は低部に滞留する性質があると考えられる。
スチレンは、ポリスチレン樹脂等の合成樹脂の原料として用いられていることから、断熱材等これらの樹脂を使用しているものに未反応のモノマーが残留していた場合には、室内空気中に揮散する可能性がある。
.アレルゲン
近年、アレルギー症状のある児童生徒等が増加しているとの指摘がある。環境衛生上、ダニ又はダニアレルゲンは、アレルギーを引き起こす要因の一であることから、「快適で健康的な住宅に関する検討会議報告書(平成10 年8月)」等では、健康で快適な住居環境を維持するためにダニやダニアレルゲン対策が重要であるとされている。
学校においては、保健室の寝具や教室等に
敷かれたカーペット等でダニ数やダニアレルゲン量が多いとの報告もあり、保健室の寝具、カーペット敷の教室等、ダニの発生しやすい場所について検査することとした。
ダニの基準値は、1 ㎡当たりのダニが100 匹以下になるとぜん息の発作が治まったという報告があることなどから、100 匹/㎡以下であることとされている。
アレルゲンを抽出し、酵素免疫測定法によりアレルゲンを測定した場合、これと同等のアレルゲン量は、Del 2 量10μg となるため、ダニアレルゲンの基準値は、Del 2 量10μg 以下であることとなる。
ダニアレルギーは、チリダニの仲間であるコナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)とヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoidespteronyssinus)によって引き起こされ、多くの国々で環
境衛生上の問題として重要視されている。
これらは、皮膚(ふけ)を食べて生活しており、咬かんだり刺したりするダニではない。
日本に生息するチリダニの代表は、この2 種類である。