・(中略)余命および死亡原因
ハンセン病は現在、適切に治療を行えば治癒する疾患であり、後遺症にまで進展するケースは少ないため、余命に関する統計は行っていない。
プロミン発見以前は適切な治療法が存在しなかったため後遺症に至るケースも多く、後遺症を含めた余命を考慮すると、若干低くなる。
ハンセン病の神経障害が原因で生じる喉頭機能障害は、呼吸困難を誘発するため主な死亡原因であった。
日本では療養所内の食糧事情の問題の影響など社会的事情から、感染症が療養所内で流行するなど、余命の低下が昭和20年をピークにみられた。
死亡原因としては、日本国内やその頃統治していた韓国では結核が、沖縄ではマラリアが最大であった。
現在では、ハンセン病以外の死亡統計と変わらず、平均年齢86.7歳の71名の死亡原因は肺炎21名、悪性腫瘍20名、循環器疾患9名、脳血管疾患5名、呼吸不全(肺炎を除く)5名という統計がある。
3年間の当園における死亡症例の検討、福島一雄、日本ハンセン病学会雑誌、78,144,2009.
ハンセン病と社会
ハンセン病に関しては、感染性の問題や差別・隔離の問題などが世界各地で起きている。
その現状と問題点についてこの項目では述べる。
なお、日本のハンセン病問題については、特殊な事情も絡むため日本のハンセン病問題に詳しく述べるものとする。
差別の原因
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ハンセン病患者に対する差別には、いろいろな要因がある。
外見上の特徴から、伝統的な穢れ思想を背景に持つ有史以来からの宗教観により神仏により断罪された、あるいは前世の罪業の因果を受けた者のかかる病と思われていた。
# 「ハンセン病は、感染元がらい菌保有者との継続的かつ高頻度に渡る濃厚な接触が原因であるという特徴がある」ことから、幼児に対する性的虐待や近親相姦などを連想させ、偏見が助長された。
「非常に潜伏期が長いため感染症とは考えにくい」「政府自らが優生学政策を掲げた」ことから、「遺伝病」であるとの風評が広められた。
# スティグマ (stigma) という言葉で説明する考えもある。
スティグマは、もともとはギリシアで奴隷・犯罪人・謀反人であることを示す焼き印・肉体上の「しるし」のことで、汚れた者・忌むべき者というマイナスイメージが肉体上に烙印されたものである。
ハンセン病に関するスティグマの広範な論及はウイリアム・ジョップリングの1991年の論文が最初である。
大谷藤郎の著書「現代のスティグマ ハンセン病・精神病・エイズ・難病の艱難」で知られるようになった。
学術用語としてはアーヴィング・ゴッフマン (Erving Goffman) が使用した。
鼻の軟骨炎のために鞍鼻(あんび)や鼻の欠損を生じるが、同じ症状を呈する梅毒と同じと信じられた時期があった。
ハンセン病に罹患したダミアン神父もまた、女たらしなどという非難があったのは、梅毒とらい病が同じであると考えられていたからである。