・ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議より
http://www.kokumin-kaigi.org/kokumin03_53_07.html
・ニュースレター 第56号 (2009年4月発行)
環境法の今・第26回
土壌汚染対策法改正の動向
国民会議常任幹事 弁護士 佐 藤 泉
1.土壌汚染対策法の施行状況
土壌汚染対策法は、平成15年2月14日に施行された。
その内容は、有害物質使用特定施設の廃止時(法第3条)及び都道府県知事が土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあると認めるとき(法第4条)に、調査が行われ、調査の結果基準値を超過した場合には指定区域に指定された後、指定区域の管理(開発の制限、汚染除去等の措置)が行われるものである。
この法律に基づき、施行日から平成20年2月14日までの5年間に、898件の調査が行われ、そのうち指定区域に指定されたものが259件、対策の終了により指定区域を解除されたものが128件となっている。
2.何が問題か
(1)調査の実態
環境省が全指定調査機関を対象に実施した調査によれば、平成18年度に指定調査機関が全国で受注した件数は14,032件であり、このうち3%が法律に基づく調査、22%が自治体の条例・要綱に基づく調査、残りの86%が自主的調査であった。
自主的調査の割合が高いということは、企業の環境に対する意識が高くなっているという評価も出来るが、同時に法律の適用範囲が狭すぎて、社会のニーズに合致していないという評価も出来る。自主的調査の場合、適切な情報公開が行われないだけではなく、対策の妥当性にも疑問が残る。
(2)対策の実態
また、都道府県等が把握した土壌汚染事例(法対象外を含む)467件のうち、329件が掘削除去を行っていた。
土壌汚染対策法では、土壌汚染の管理について、必ずしも掘削除去の手法を奨励しているわけではないが、現実には汚染の除去が明確で指定区域を解除することが好まれるため、このような結果になっているものと思われる。
しかし、掘削除去には多額の費用がかかるばかりではなく、大量の土砂搬出という新たな環境汚染の危険も含んでいるものであり、安易な掘削除去ばかりが選択されることには疑問がある。
(3)汚染土壌の搬出先
土壌汚染対策により搬出される汚染土壌は、残土処分場、中間処理施設、認定浄化施設、セメント工場、最終処分場などへ搬出されているものと推定される。
しかし、汚染土壌の運搬について、把握を行う法的制度は十分に整備されていない。したがって、汚染土壌が不適正に処理される危険がある。
(4)自然由来は・埋立地は
現在の土壌汚染対策法は、自然由来による環境基準超過の土壌について、どのように扱うのかについて法的には明確ではない。
また、海面埋立地等、埋立の段階で環境基準を超過する土砂が適法に使用されている場合に、土壌汚染対策法をどのように適用するかについても明確ではない。
そのため、自治体及び事業者の間で混乱が生じている。
(5)不動産取引への影響
土壌汚染の可能性がある土地については、汚染除去費用が不動産の価格を上回るため、対策が行われず、また有効な利用も困難な状況(ブラウンフィールド問題)が発生している。
また、過去に売買された土地で発見された土壌汚染をめぐり、訴訟が頻発しており、善意の買主にも責任が生じるため、取引の安全を害する状況もある。