・Th2活性阻害薬
IPD(アイピーディー)というTh2活性阻害薬(内服薬)が、症状に応じて使用されることがある。
IPD(アイピーディー)は、アトピー性皮膚炎や気管支喘息でも使われる薬剤である。
花粉症では、Th2細胞活性の亢進・サイトカインの中のIL-4・IL-5(アレルギー症状を誘発するもの)の産生の増加がみられることがあるが、この薬剤はTh2細胞の活性を低下させIL-4・IL-5の産生を抑制する作用があり効果があるとされる。
ただし、即効性はなく、効果が現れるのに数週間ほどの時間がかかるという特徴がある。
自律神経作用薬
鼻詰まりが強い場合、いわゆる血管収縮剤(α交感神経刺激薬)と呼ばれる薬剤の点鼻薬が処方されることがあるが、連用すると効果が弱まるだけではなく、かえって鼻詰まりがひどくなり、依存(離脱困難)になることもある。
そうした副作用が出やすいため、短期間に限って処方されることが多い。
鼻詰まりがひどい患者がステロイド点鼻を行うとき、薬剤が鼻腔内に入っていきやすいように、あらかじめ鼻粘膜を収縮させるために用いる場合がある。
この種の薬剤は市販のほとんどの点鼻薬に含まれており、即効性と高い効果があるため、説明書の注意書きを守らずに乱用してしまいがちである。
花粉症に使われる市販薬でいちばん問題になるのが、この点鼻薬の副作用である。
幼児の場合、まれに重い副作用が出ることもあるので使用を避けるべきである(原則的に5歳以下には用いない)。
血管収縮剤は充血を取ると称する市販の点眼薬にも多く含まれており、やはり連用するとかえって充血がひどくなることがある。
副交感神経遮断薬である抗コリン薬はエアゾール剤の関係で製造を中止している。
•血管収縮剤(点鼻)--硝酸ナファゾリン、塩酸トラマゾリン等
薬物治療の注意点
病気によっては禁忌となっている薬もあるので、持病のある人はたとえ気軽に買える市販薬であっても、その使用については医師・薬剤師に相談すべきである。
他に薬剤を常用している人や、乳幼児、小児、妊婦、授乳婦も同様である。
なんらかの副作用を感じたら、早めに医師・薬剤師に相談すべきである。
作用と副作用とのバランスを考え、効果が不充分なものであったり、眠気などの副作用があまりに日常生活に支障があるようであれば、違う薬および治療法に変更してもらうよう医師に相談することも大切である。
あまりものわかりのよくない医師であると感じたら、病院を変更するのも一つの方法である。
減感作療法
花粉症の確実な根治療法はまだ確立されておらず、このアレルゲン免疫療法(減感作療法)がもっとも根治療法に近い。
広く免疫療法とも呼ばれ、広義では変調療法ともいわれる。
一般的には下記の抗原特異的アレルゲン免疫療法を指す。
WHOの見解書では、アレルゲン免疫療法(減感作療法)が花粉症の自然経過を変える唯一の根本的治療法として記述されている。
20世紀初頭よりトキソイド研究から派生した抗原特異的アレルゲン免疫療法は大別すると皮下投与による減感作療法と経口投与による舌下減感作療法とに大別される。
前者はおおむね米国を中心に盛んであるのに対して後者はヨーロッパを中心とした治療方法である。
アレルゲン免疫療法は薬物療法とは異なり、治療終了後もアレルギー防止効果が持続する点が特徴である(患者によっては数~十数年後に同一または異なる花粉に再感作する可能性はある)。
一方、現在承認されている治療方法では毎週~月1回程度の通院治療が必要であり、完全な効果を得るにはに数年程度継続する必要がある。
舌下減感作療法は在宅治療が期待されるが日本においてはアレルゲンワクチン錠は未承認である。
花粉症のアレルゲン免疫療法は花粉シーズン前から開始すると有効性が高い。
2007年時点では米国では数十種類の標準化アレルゲンワクチンが上市されているのに対して、日本においては標準化スギアレルゲンが上市されているに過ぎない。
日本においても標準化アレルゲンワクチンの多様化を期待する意見がある。
直接アレルゲンをアレルゲンワクチンとする抗原特異的アレルゲン免疫療法以外にも、限定的ではあるが非特異的アレルゲン免疫療法も存在している。