・2.アンチモン(Sb)による土壌汚染
アンチモンの人体影響
アンチモンは心臓毒性を持つことが知られている。
また、人に対する慢性毒性として、呼吸器系の刺激症状、アンチモン斑と呼ばれる膿胞性皮疹が認められることがある。
アンチモンエアロゾルに曝露された婦人労働者に後期自然流産・未熟児出生・婦人科的問題の増加がある。アンチモンは発がん性物質である可能性がある。
アンチモンの非汚染土壌中濃度
日本各地の非汚染土壌表層土のアンチモン濃度の幾何平均値は0.37mg/kgDW(DW:乾重)である。
また、日本各地の土壌(表層土・下層土含む)のアンチモン濃度の中央値は0.65mg/kgDWである。
アンチモンの汚染土壌中濃度
もっぱらアンチモンの製錬をしている日比野金属、三国精錬、中瀬鉱山などの周辺土壌中アンチモン濃度は、幾何平均値で10.8、49.2、19.2mg/kgDW、最大値では136、277、321mg/kgDWであり、非常に高い値であった。
工場労働者は勿論、アンチモン汚染地周辺住民の健康状態の調査が必要である。
アンチモンの生産・輸入量と消費・輸出量
生産量は1970年をピークに激減し、輸入量が急増している。
アンチモンの消費量では、鉛蓄電池用、硬鉛鋳物用が若干で、三酸化アンチモンの消費量はほとんどが合成繊維の難燃剤である。
都市ゴミ中アンチモン濃度
1996年1~3月の大阪市内の都市ゴミ焼却場からの試料による分析から、アンチモン濃度は30~50mg/kgであり、これが都市ゴミ中アンチモンの平均値であると仮定すると、アンチモンの国内生産量の約20%が都市ゴミとして排出されることになる。
都市ゴミ焼却場から排出されるアンチモンによる環境汚染も気になるところである。
道路脇粉じん中アンチモン濃度
道路脇粉じんにもアンチモンは含まれている。
日立市を除いては、大都市ほど道路脇粉じん中アンチモン濃度は高いようである。
道路脇粉じんは風により巻き上がり、吸気中に入る可能性がある。