・ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議より
http://www.kokumin-kaigi.org/kokumin03_53_07.htm
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・ニュースレター 第49号 (2007年12月発行)
カドミウムなど重金属による土壌・農作物汚染
茨城大学名誉教授 浅見輝男
カドミウム中毒によるイタイイタイ病、有機水銀中毒による水俣病が深刻な社会問題になってから久しいですが、イタイイタイ病、水俣病も未だ問題は解決していません。
イタイイタイ病の原因物質であるカドミウム、難燃剤として大量に使われているアンチモン、有益であるという錯誤から飲用され死亡事故を起こしたゲルマニウム、神栖市の有機ヒ素化合物による環境汚染・人体被害について、たいへん興味深いお話がありました。
詳細なデータを用いての詳しいご講演でしたが、紙幅の関係で概略のみご紹介します。(文責:編集部)
1.カドミウムによる土壌とコメの汚染
農用地土壌汚染対策地域
日本では重金属汚染のうちカドミウム汚染が最も深刻である。
一番最近では、大牟田の100haが2004年11月4日に汚染地として指定された。
カドミウムによる土壌汚染問題は未だ続いている。
コメ中カドミウム濃度の許容基準値
日本における食品中カドミウムの許容基準値(最大レベル、最大基準値)は玄米についての1.0mg/kg(以下現物当り)しかない。
国際的にはFAO/WHOの下部機関のコーデックス食品添加物・汚染物質部会(CCFAC)において、食品基準値について検討が行われ、コーデックス食品規格委員会(CAC)で採択された精米中カドミウムの最大レベル案は、当初は0.1mg/kg、1999年に0.2mg/kgに変更され、日本政府の強い働きかけにより0.4mg/kgになった経緯がある。
CCFACに対する日本政府の主張
日本政府の主張は(1)日本は火山灰土壌が広く分布しており、火山灰土壌はカドミウム濃度が高いので作物中濃度も高い、(2)日本の非汚染土壌でも0.4mg/kgに近い濃度のカドミウムを含むコメが生産された、(3)国内データを用いて実施した確率的曝露評価によっても0.4mg/kgのレベルはいかなる公衆衛生上の問題を起こさないという三点であるが、いずれも理由にはならない。
(1)について:火山爆発で噴出される火山弾や火山灰は1000℃なので、767℃と沸点の低いカドミウムは火山爆発の際にほとんど気化して火山噴出物から分離される。火山灰土壌は汚染カドミウムを多く集積するが、火山灰土壌にはアロフェンなどの粘土鉱物と有機物が多く含まれ、それらがカドミウムを強く吸着するため、イネによって吸収されにくい。
(2)について:根拠とされている調査で対象とされた場所は、いずれも非汚染土壌とはいえず、カドミウムによって汚染されていたと考えられる。
(3)について:この「確率的曝露評価」は、食品摂取量については国民栄養調査(平成7~12年)のデータを用い、20歳以上でかつ妊娠していない者のデータを用いたとのことであるが、年少の人ほど体重1kg当たりの食品摂取量(したがってカドミウム摂取量)が多いと考えられるのに19歳以下を除いた理由が説明されていない。香山(2003)「カドミウムの吸収率に関する研究」によれば、体重1kg当たりのカドミウム吸収量は年齢が低いほど著しく高くなる。
また、確率的曝露評価が用いた農水産物中カドミウム濃度の値にも大きな疑問がある。
本来あるべきコメ中カドミウム濃度
カドミウム汚染地における疫学研究を基に算出したコメ中カドミウムの最大レベルは0.05~0.11mg/kgである。
したがって、CCFACが決めた0.4mg/kgは勿論、原案の0.2mg/kgでも高すぎる値である。
世界におけるカドミウム生産量と消費量
2006年のカドミウム生産量の56.5%をアジアで占めているが、そのほとんどは東アジア(韓国、中国、日本)である。カザフスタンもかなり多い。また、アメリカ大陸のカナダ、メキシコもかなり多い。
一方、同年の消費量はアジアが52.3%を占め、中国が33.6%と圧倒的に多い。第2位はベルギー、日本の消費量は2000年の3分の1に減ったが世界の第3位である。
生産量・消費量共に世界の半分以上を占めているアジア、特に韓国、中国、日本など東アジアの国々におけるカドミウム汚染が深刻であると考えられ、中国、韓国が日本の二の舞を踏まないことを念願したい。