低周波音が問題とされた公害紛争事件3 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

・3) 測定
調停委員会では、低周波音等の発生源・発生プロセスの特定や効果的な対策の検討に資するため、低周波音を含む騒音測定を実施することとした。

既存の測定結果からは超低周波音領域に特段の卓越成分(突出した音圧ピーク)が認められなかったことから、普通騒音計(但し、12.5ヘルツ迄の測定が可能)を用いて、発生源側の医療施設屋上8地点と申請人5世帯の住宅室内外12地点の合計20地点で同時測定を行った。
なお、訴えの対象が低周波音であっても、100ヘルツ以上の比較的低い音が低周波音と誤解されている場合もあるので、低周波音のみを測定するのではなく、100ヘルツ以上も視野に入れた測定を行うことが望まれる。
本件では、医療施設の側に発生源となり得る様々な機器が存在するため、申請人がどの音に不快感を抱いているかを特定する必要もあった。

このため、測定の際は、空調室外機、変電装置排風機及び換気扇を別々に稼働させるとともに、申請人宅の窓を開閉するなど複数の条件を設定したり、空調室外機について全機器稼働させる場合と深夜時間帯に稼働する可能性のある機器のみ稼働させる場合を設定するなど、きめ細かな測定を行った。
なお、本件で主な発生源と考えられた空調室外機は、外気温や室温の条件で稼働状況が異なるため、できるだけ機器の稼働状況が高くなるように条件設定を行った上、機器の使用電流量を記録して、稼働状況を客観的に確認した。

(4) 測定結果の分析と評価
測定結果については、騒音レベル(A特性)を確認したほか、環境省の「低周波音測定マニュアル」で推奨される1/3オクターブバンド周波数分析を行い、また、参考までにFFTによる狭帯域分析も実施した。

同時測定の分析結果からは、医療施設の屋上に設置された機器から生じた音が、申請人住宅の室外及び室内にどのように伝搬しているかを明確に確認できた。

他方、室内でのみ卓越成分が観測され、室外や機器の側で観測されないものについては、室内に音源があることが推測された。
騒音レベルについては、環境基準値との比較を行ったところ、全空調室外機を稼働させた場合に、一部の申請人宅で夜間の環境基準値を超える騒音が観測された。
周波数分析結果の評価に当たっては、国際標準化機構(ISO)で定められている可聴音の閾値(最小可聴値)のほか、「音が気になる ――― 気にならない50%値」との比較を行った。

この評価値は、昭和55年度文部省科学研究費「環境科学」特別研究の「低周波空気振動に対する感覚と評価に関する基礎研究」で行われた低周波音の感覚実験結果による数値であり、被験者の50%が「気になる」と感じる音圧レベルを示したものである。

本件では、屋上に設置された機器の移設が建物の構造上困難な上、周辺の日照に配慮して防音壁の高さを抑えざるを得ない事情があり、こうした制約の下で当事者双方の理解を得るには、被験者の半数が「気になる」と訴える水準を目安とすることが適当と考え、50%値を参考とした。

周波数分析の結果からは、100ヘルツを中心に50%値を超える状態が確認された。
なお、各申請人宅での測定現場には申請人に同席いただき、音の体感状況の記録をお願いした。測定結果と体感結果の相関関係を見ることで、申請人が具体的にどの音に不快感を抱いているかが明らかになった反面、必ずしも対応関係が認められないものも確認された。

こうした情報は、効果的な対策を検討するために活用された。