・2.清瀬・新座低周波騒音被害等調停申請事件
(1) 経緯
平成13年10月、埼玉県及び東京都の住民(5世帯の10名)から、同人らの住居に隣接する土地に建設された医療施設の運営法人に対して、同施設屋上に設置された空調室外機、変電装置等から発生する低周波音を含む騒音に対する実効的な防音対策等を求める調停申請が埼玉県知事になされた。
本事件は、埼玉県と東京都にまたがるいわゆる県際事件であり、同年11月に埼玉県から公害等調整委員会に送付された。
公害等調整委員会では、直ちに調停委員会(調停委員長・田辺淳也)を設置し、現地調査を実施するなど調停手続を進めた。
(2) 専門委員の任命と技術検討の体制作り
低周波音は、かっては騒音よりも振動が問題となることが多く、大型の産業機械や道路の橋桁等から発生する超低周波音が室内の建具等を振動させて苦情が生じる事例が主流だった。
しかしながら、産業現場での対策が講じられてきた結果、こうした振動事例は減少し、替わって増加傾向にあるのは可聴域の低周波音が耳につくという苦情である。
これには、家屋の遮音性能が向上し、一般環境中に存在する比較的高い周波数領域の音の室内レベルが低下する中で、遮音効果の小さい低周波領域の音が相対的に目立ってきたことも理由の一つと考えられている。
超低周波音とは異なり、可聴域の低周波音の発生源は比較的身近な生活の場にも多く存在するため、本件のような住宅地域で空調室外機等から生じる低周波音が問題となる事例も増えている。
そうした事例では、従来の騒音対策だけでは対応しきれない面もあり、効果的な対策の確立が求められている。
このため、調停委員会では低周波音に係る音響分野及び対策分野の各専門家を専門委員に任命するとともに、本件医療施設の設計業者、施工業者、空調室外機メーカー、空調室外機設置業者の参加・協力の下に、低周波音を含む騒音の低減対策について検討を進めることとした。