・C.遺伝子(DNA)の影響
がんのリスクはDNA損傷に関わりがあり、それは成長と発達に関わる遺伝子の青写真を変える。
DNAが傷つくと(遺伝子が傷つくと)、これらの傷ついた細胞が死なない危険性がある。むしろ、傷ついたDNAで自身を再生産し続けるだろう。
これは、がんが発生する必須条件の一つだ。DNA修復の減少も、このストーリーの重要な部分だ。
DNAの修復率よりDNA損傷率が多くなると、遺伝子変異を保ち、がんを開始する可能性がある。
ELF とRF がどのように遺伝子とDNAに影響を与えるのかを、調べた研究は重要だ。
なぜなら、がんにつながる可能性があるからだ。
10 年前でさえ、非常に弱いELF 場とRF 場は、DNAと細胞の働き(または細胞損傷や、正確に働かなくなること)に全く影響がないだろう、とほとんどの人が信じていた。
その主張は、これらの弱い電磁場が損傷を起こすほどの十分なエネルギー(物理的に十分に強くない)を持っていない、ということだった。
しかし、私たちが既に知っているように、エネルギーは損傷を起こす重要な要因でなく、様々な方法がある。
例えば、毒性化学物質への曝露は、損傷を引き起こすことができる。
体内のホルモンバランスを含む、繊細な生物学的過程のバランスを変えることは、細胞を傷つけたり破壊したりする
ことができ、病気を発生させることができる。
実際のところ、数多くの慢性疾患は、加熱作用を全く必要としない、この種の損傷に直接結びつく。
細胞コミュニケーション(細胞が互いに作用する)の妨害は、直接、がんを引き起こすか、早く成長するためにすでに存在しているがんを促進させる。
現在の遺伝子テスト技術を使うことは、どのように電磁場が体の分子に影響を与え、標的にするのかについて、将来、役に立つ情報をおそらく与えるだろう。遺伝子レベルで、電磁場(ELF とRF の両方)がどのようにDNAの働きに変化を起こすことができるのかについて、現在、いくつかの証拠がある。
実験研究は、弱い電磁場が遺伝子とたんぱく質の機能に影響を与えるのかどうか(そして、どのように影響を与えるか)を知るために行なわれた。
そのような変化は、いくつかの研究で見られたが、全ての研究で見られたわけではない。
たんぱく質や遺伝子発現の小さな変化は、細胞の生理機能を変え、健康とウェル・ビーイングに、後で影響を与えることができるだろう。
遺伝子、たんぱく質、DNAの研究はまだ始まったばかりだ。しかし、弱い電磁場が記録を変えるという遺伝子レベル、たんぱく質レベルでのいくつかの裏付けがあるで、何が健康リスクを引き起こすのかを確定する重要な段階にあるかもしれない。
DNA、遺伝子、たんぱく質、電磁場に関する研究で注目に値するのは、電磁場が損傷を発生させるには弱すぎるということが本当なら、全く影響が起きないはずだということだ。
電磁場のエネルギーは、害を起こすには無意味で重要ではないと信じる科学者は、これらの変化を説明するのが難しいので、これらの変化を、ただ無視するだけの傾向がある。
この観点の問題は、影響が発生しているということだ。これらの影響を説明できないといことは、影響が想像上のもので重要ではない、と考える良い理由にならない。
ヨーロッパの研究プログラム(REFLEX)は、DNAの実験で正常な生物学的機能の多数の変化を証明した(3)。
これらの結果で重要なのは、遺伝子やDNAでこれらの変化が起きた時、人間の健康リスクが発生するかどうか、という疑問に直接結びつくことだ。
この大規模な研究努力は、1 ダース以上の異なった研究結果から電磁場影響に関する情報を生み出した。
いくつかの重要な見解を下記に挙げる。
「遺伝子の突然変異、細胞増殖、アポトーシス(訳注:細胞の自然死)は、遺伝子やたんぱく質発現プロフィールの変化によって、またはその結果として発生する。
これらの出来事の集合は、全ての慢性疾患の発達について求められる」(3)。
「電磁場被曝の後で、遺伝子毒性影響と無数の遺伝子とたんぱく質の発現が変わることは、全く疑いなく証明できるだろう」(3)
「RF 電磁場は、ラットの繊維芽細胞、HL-60 細胞、顆粒膜細胞(訳注:卵胞の細胞)、マウスのES 細胞から誘発された神経前駆細胞で遺伝子毒性を作った」(協力者2,3,4)(3)。
「細胞は、頻繁に小核とDNAの単鎖または二重鎖破壊を有意に増やすSAR値0.3~2W/kg のRF被曝に反応した」(協力者2,3,4)(3)。
「RF 電磁場被曝に伴うHL-60 細胞でのフリーラジカルの細胞間世代の増加は、はっきりと証明されるだろう」(協力者2)(3)。
「誘発されたDNA損傷は熱効果に基づいておらず、ELF 電磁場被曝の環境安全限度値について考慮するよう促す」(3)。
「影響は、高齢者のドナーの細胞でより明らかに際立った。
それは、DNA鎖破壊を引き起こすELF 電磁場によるDNA修復有効性が、高齢なほど減ることを示す」(3)。
ELF とRF 被曝はどちらも、現在の安全限度値よりも低い被曝レベルを含む一定の被曝状況下で、遺伝子毒性(DNAを傷つける)がある、と考えることができる。