・疫学 [編集]
疫学的には、生涯有病率1.6%–2.2%と言われる。
従来は心理的な葛藤が根本にあると思われてきた。
しかし近年、認知行動療法の有効性が明確となり、心理的「原因」よりも、症状に対する患者の対処が症状進展のメカニズムとしては重視されるようになった。
また薬物療法の有効性も確認されており、生物学的因子があるという意見も強くなっている。
パニック障害の重症度は様々であり、軽度の患者もいれば重度の患者もいる。
重症例では、適切な治療を受けないまま経過すると、数年間にわたって外出できないなど、日常生活や社会生活に大きく支障をきたす場合もある。
特にパニック障害という病名がまだ広まっていなかった時代に初発した患者の中には、広場恐怖の程度が重く、長期化する例を見ることが比較的多い。
なお、パニック障害にうつ病が併発する場合が少なくはなく、日本では約3割、欧米では約5–6割といった統計も出されている。
診断 [編集]
「予期しないパニック発作」が繰り返し発生し、それらに対する予期不安が1か月以上続く場合、パニック障害の可能性が疑われる。
突然のパニック発作で始まり、予期不安を生じ、症状が持続するようになり、広場恐怖に進んでいくという経過の確認も、臨床診断においては、重要であるとされる。
実際の臨床場面では、パニック障害は、広場恐怖を伴う慢性化したものと、広場恐怖を伴わない軽症例の2つに区分される。
診断基準としてはアメリカ精神医学会『DSM-IV 精神障害の診断と統計の手引き』が用いられることが多い。
なお、PTSD・うつ病・強迫性障害などの精神疾患の症状の一つとしてパニック発作を併発する場合があるが、この場合は、これらの病気の症状の一つとして扱われ、パニック障害とは診断されない。
また身体疾患が原因になっている場合もパニック障害とは診断しない。
注意すべき点 [編集]
パニック障害という概念の歴史が浅いこともあり、中高年医師がこの概念を学生時代には学んでおらず、精神科もしくは心療内科以外の診療科では診断が困難となる場合がある。
また患者側も、心臓など身体に問題があるととらえてしまい、別の診療科を回ってしまう場合もある。これらの条件のため、長期間、適切な診断がなされない場合のあることを念頭に置いておく必要がある。
このため、パニック障害の疑いがあると思う時には、精神科・神経科・心療内科を受診する必要がある。