ビスフェノールAの大脳皮質形成への影響3 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・5.BPAによるエピジェネティクス(注)への影響
 次にBPAの作用メカニズムを調べるために、遺伝子を働かせるオン・オフのスイッチを入れる仕組みであるエピジェネティクスに対する影響を解析した。

個体発生、細胞分化の過程で、どの遺伝子のスイッチがオン・オフになるかは大変重要である。

妊娠初期からBPAを低用量投与された、妊娠12.5-14.5日の仔マウス大脳皮質を含む終脳領域のDNAを特定の酵素で切断して得たDNA断片を2次元上のスポットとして描出した(RLGS法)。

BPA投与群とBPA非投与群の間でスポットを比較したところ、スポット全体の1.9%に相当する48個が変動を示した。

それら変動したスポットから決定した2種類の遺伝子について、その遺伝子発現(mRNAの産生)を調べたところ、BPA曝露群で遺伝子発現が亢進していた。

これらの結果から、BPAを胎生期に曝露すると遺伝子本体であるDNA上のオン・オフのスイッチに変化が起こり、脳形成・発達に影響を及ぼす可能性が示唆された。

環境化学物質のエピジェネティクスへの影響に関しては、農薬ビンクロゾリンでも報告があり、この例では妊娠期に曝露すると仔ラットに影響が出るだけでなく、4代後までの仔ラットに、不妊などのリスクが高くなるという。

6.結論
 以上の結果より、BPAは胎児期曝露により、脳の形成過程に影響を及ぼすこと、さらにその影響は成熟してからも、神経回路形成異常など永続的な変化をもたらすことが判明した。

これらのメカニズムは甲状腺ホルモンの攪乱、遺伝子の転写因子の攪乱、エピジェネティクスへの影響など、複数の経路を介していることが明らかとなったが、その作用メカニズムに関しては今後さらなる研究が必要である。

(注)エピジェネティクスとは、最近注目されている分野で、遺伝子の本体であるDNAがメチル化(DNAへのメチル基の結合)などの修飾により、遺伝子の転写(遺伝子発現)がオンからオフになるというメカニズムで、細胞が特定の蛋白質を作りその機能を発揮するために不可欠な遺伝子調節機構である。

転写因子やホルモンなどと違い、一旦DNAメチル化が起こると、細胞分裂後も引き継がれ、その影響は場合によっては生涯永続し、さらにメチル化の場所によって、子孫に引き継がれることがある。環境化学物質だけでなく、栄養状態やストレスなどの環境要因の影響を受けることがわかっており、疾患との関連が注目されている。             (報告:黒田純子)


runより:ビスフェノールAは世界で初めてカナダで環境ホルモンと認定された物です。