ビスフェノールAの大脳皮質形成への影響 | 化学物質過敏症 runのブログ

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ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議より
http://www.kokumin-kaigi.org/kokumin01.html


・ニュースレター 第55号 (2009年1月発行)


ビスフェノールAの大脳皮質形成への影響
京都府立医科大学・大学院医学研究科・分子病態病理学教授 伏木信次氏

 内分泌攪乱作用が懸念されながらも一旦は安全と評価されたビスフェノールA(BPA)は、2008年に国内外で再度胎児への影響について危険性が指摘され話題となっている。12月6日国民会議総会記念フォーラムで、このBPAが脳発達へ及ぼす影響について最先端のご研究をなさっている伏木信次先生にご講演頂いた内容の概要をご報告する。

1.脳の形成・発達に重要な現象
 本題に入る前に、正常な脳が形作られるには、以下の4つの現象が過不足なく、しかも秩序正しく機能することが必須であることを念頭に入れておきたい。
1)細胞増殖:神経細胞とグリア細胞の母である神経幹細胞が適正な数に増殖することは脳形成の最も基盤をなす。
2)細胞死:神経幹細胞の増殖や神経細胞の産生が過剰になるとそれら細胞が死ぬことによって調節を受ける。これは正常な脳形成に重要である。
3)細胞分化:神経幹細胞から神経細胞、グリア細胞が生み出される。神経細胞では突起が伸長しシナプスを形成するなど特有の分化が起こる。
4)細胞移動:分化に伴い神経細胞は脳内の本来占めるべき位置に移動し、一定の配列をとり、そのうえで細胞相互の間で神経回路を形成する。

 これらの現象には、遺伝要因と環境要因の両方が関与する。

ヒト脳の特徴である高次機能を担う大脳皮質の発生過程に着目すると、妊娠7-15週で、大脳皮質の神経細胞は1分間に平均25000個産生される時期があり、この段階で作用する環境要因は特に重要である。

これらの神経細胞は大脳皮質内で移動し、層構造を構築するが、そのメカニズムは複雑で、多くの分子、遺伝子が関与している。

妊娠中には、たとえば大脳皮質と脊髄を繋ぐ重要な神経回路も形成され、左右の大脳皮質神経細胞に発した神経突起は延髄で交叉し(錐体交叉と呼ばれる)、このため右半身は左脳の、左半身は右脳の支配を受ける。

これらの神経回路形成も、遺伝要因と環境要因の影響を受ける。

環境要因が脳形成に重要であることは、胎生期放射線被曝により、大脳皮質神経細胞の正常な移動が遅延し、その結果、ヘテロトピー(異所性灰白質:神経細胞の配置異常)や小頭症が発症することを研究してきた経緯からも注目してきた。