・そのため現在では、MDSDによる化学物質の表示が行われていますが、消費者支援グループを対象にしたアンケート結果によると、一般の消費者はMDSDをほとんど認知していないことが分かっています。
鹿庭さんご自身、MDSDによる表示が健康被害の防止に十分に機能していない現状に、大変ショックを受けたとのことでした。
そもそもMDSDは、製品に使用されている化学物質の情報をメーカーの関係者にのみ伝達するための表示方式で、一般の消費者向けに規定されたのではありません。
一方で、時に“公開せず”として詳細を明らかにしていなかったり、“皮膚感染性あり”という具体性に欠ける表記であったりするため、メーカー関係者の間でも、化学物質に関する十分な情報を伝える表記として機能していない、とのご指摘がありました。
先にあげたアンケートでは、消費者に分かりやすい表示を希望する声が多く、また、鹿庭さんご自身も、次の健康被害防止のために、具体的な過去の健康被害事例を製品に表示していくほうが望ましいと考えていらっしゃるようです。
2.法的取り組みの流れと「重大製品事故」
このような化学物質の被害から子供を守るために、経済産業省を中心に規制体制が築かれている、との報告がありました。
74年から施行されている家庭用品規制法において、乳幼児用品には原則として化学加工を施さない旨が明記され、07年から施行されている改正・消費生活用製品安全法において、製品による疾病や負傷の治療に30日以上を要する場合は、「重大製品事故」と認定され、原因をもたらした製品が規制されることになっています。
この法律の適用第一号は、アレルギー性接触皮膚炎を引き起こすビジリン系抗菌剤を含んでいたデスクマットであり、今後も、30日以上の加療という明確な判断基準のおかげで、規制の対象となる製品が増加していくだろう、とのことでした。
3.健康被害防止のために
鹿庭さんが繰り返しておっしゃられたことは、化学物質による健康被害発生防止のためには、国だけでなく製造元であるメーカーの果たす役割が大きいということです。
そのためにメーカーは、前述のごとく化学物質に関する表示の内容に明確性・具体性を持たせることに加えて、乳幼児や妊婦など、化学物質による影響を受けやすいハイリスクグループに配慮した製品開発を行う必要があるようです。
そして私たち消費者は、メーカーの化学物質に対する姿勢、具体的には健康被害に対する対応や製品開発に対する姿勢をもとに、その各メーカーを評価しなおすことが必要だということをおっしゃっていました。
最後に、AG+の整汗剤など身の回りの製品の中に、すでに使用されているナノ材料についての言及があり、アスベストと同様に呼吸器系に被害をもたらすのではないかと言われているため、今後の急速な解明を期待している、とのことでした。
化学製品や家庭用品による健康被害を防止する上で、メーカーのみに責任を押し付けるのではなく、私たちもまた、メーカーを適切に評価することのできる消費者とならねばならないということも実感できた、実りある講演でした。
【報告:荒谷淑恵】
runより:子供の頃から我々は知らない内に化学物質を体内に入れてしまっていました。
今後そうならない努力をしていかなければいけませんね( ̄_ ̄ i)