・ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議より
http://www.kokumin-kaigi.org/kokumin01.html
ニュースレター 第54号 (2008年10月発行)
身近な科学製品、家庭用品等による子どもへの影響
講師:鹿庭 正昭氏
(国立医薬品食品衛生研究所室長)
鹿庭さんは、国立医薬品食品衛生研究所で、身の回りの家庭製品によってもたらされる健康被害の原因究明と予防にご尽力されていらっしゃる方で、皮膚障害、その中でも特にアレルギー性接触障害を専門とされていらっしゃいます。
シンポジウムでは、化学製品、家庭製品によるアレルギー性接触障害に関して、q健康被害への対応と研究者の役割、w法的取り組みの流れと「重大製品事故」、e健康被害防止のために、という構成で、研究者サイドからのお話を伺うことができました。
1.健康被害への対応と研究者の役割
始めに繰り返し強調されたことは、化学物質への対策を考える際には、健康被害がどのような化学物質によってもたらされているのか、そしてその化学物質がどの製品に用いられているのかを正しく認識することが不可欠だということです。
例えば、当初ガソリンへの含有が問題になっていた鉛。
80年代から順次行われている調査では、色鉛筆や遊具といった子供の身の回りにあふれている製品に、最近では金属アクセサリーにも含まれていることが分かっているそうです。
現在ではメーカー側の協力もあり、このような状況が改善されつつあるようですが、継続的な鉛の調査が行われていなければ、私たちは今もまだ、知らず知らずのうちに鉛を含んだ金属アクセサリーを身につけていたかもしれないというご指摘がありました。
身の回りに潜む化学物質から引き起こされる健康被害の原因究明は、医師によるパッチテスト、毒性学者によるアレルゲン検索、メーカーによる製品表示、化学研究者による化学物質の特定など、様々な専門家によって分担して進められているそうです。
例えば、ゴム製品による皮膚障害を調査するケースにおいて、化学研究者は、障害をもたらしたゴムの組成を複数のタイプの中から特定することにご尽力されているようです。
というのも、同じゴム製品でも、医療用ゴム手袋に用いられているゴム(ジチオカーバーメート系加硫促進剤、アミン)と、履物に用いられているゴム(メルカプトベンゾチアゾール系加硫促進剤)は化学物質としての基本骨格が異なり、予防法も別個に考える必要があるからです。
お話の中では、この他に広く普及している化学物質として、イソチアノイド系のものやバイオサイドが加工されたものが紹介され、これらを用いるメーカー側に自粛を促しているとの報告がありました。
また、化合物の持つ皮膚感染性の試験方法として、OECDガイドラインにおいて採用されているLLNA法が研究者の間で広く用いられていたようですが、最近では、GPMT法により交叉感作性の確認も行われているようです。
この新しい方法により、プラスチックや塗料に用いられているTCMSPをはじめとするいくつかの抗菌剤は、強いアレルギー性を持つことが判明しており、現在ではメーカーに自主規制を促しているそうです。
このように、化学物質の危険性を判断する新しい方法も登場し、その対策のために様々な関係者が協力して取り組んでいる中で、予防にもっとも大きな効果がある手法は、メーカーが、製品に化学物質の危険性を表示し、消費者に健康被害の予防を呼びかけることなのだそうです。