・ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議より
http://www.kokumin-kaigi.org/kokumin03_53_07.html
・ニュースレター 第53号 (2008年8月発行)
カナダで世界初の環境ホルモン規制!
ビスフェノールAの規制をめぐる国内外の新たな動き
事務局 植田 武智
代表的な環境ホルモン物質であるビスフェノールAをめぐって、海外での取り組みが活発化している。
アメリカでは、4月に胎児・乳幼児の発達影響を懸念する報告書が発表された。カナダでは、ビスフェノールAが溶出するポリカーボネート製ほ乳瓶の販売禁止を政府が発表した。
環境ホルモンの低用量影響に基づいた、世界でもはじめての規制措置といえる。
遅ればせながら、日本では、厚生労働省科研費による研究で、これまでにない低い用量で性周期異常の影響が確認された。
食品安全委員会が、これから行う健康影響評価の行方が注目される。
ポリカーボネート製のほ乳瓶や食器からは、環境ホルモンのビスフェノールAが溶出する。90年代日本の環境ホルモン騒動のきっかけとなった事例である。
ほ乳瓶メーカーは、代替素材への転換を促進した。
しかし政府は溶出基準を見直すことはなく、規制強化の動きは見られなかった。
その後、環境省が、環境ホルモン作用が疑われた65種類の内28物質について調査を始めた。
2005年には、ヒトに対する影響は確認されないと結論付けた。
問題のビスフェノールAでは、ヒトでの実際の摂取量を想定したラットの実験が行われたが、異常は認められないという結果であった。
日本では、環境ホルモンは空騒ぎだったという意見がさらに広がった。
アメリカ 神経・行動、生殖器官への影響を懸念
日本での空騒ぎ批判にもかかわらず、国内外での環境ホルモンの低用量影響に関する研究は増えていった。
アメリカ政府の毒性物質の評価を行う機関であるNTP(国家毒性プログラム)は、2007年にそれまでに発表されたビスフェノールAの生殖毒性および発生毒性に関する科学研究のレビューを始めた。
生殖毒性については160件以上、発生毒性については60件以上に上る国内外の研究論文を一つ一つ精査し、ヒトへの健康影響評価に使えるかどうかを評価した。
2008年4月に発表された評価概要では、ヒトが日常摂取している量で、神経や行動への影響、前立腺、乳腺、思春期の早発などの影響が出ている研究を重視。「いくらかの懸念(some concern)」があると評価した。
ちなみにNTPの化学物質の有害性評価は5段階となっていて、「有害作用について深刻な懸念」「懸念」「いくらかの考慮」「最小限の懸念」「無視できる懸念」の順になっている。
実際にヒトの曝露量はどれくらいなのか?(下図)
アメリカでは、大人の推定摂取量は、0.008~1.5μg/kg/日(1日の体重1kgあたりの摂取量)だ。主な摂取源は、缶詰とプラスティックボトルからの溶出である。
一方、動物実験で母親への投与で仔の影響が観察された量は、思春期の早発で2.4μg/kg、乳腺への影響は2.5μg/kg、神経や行動、前立腺への影響は10μg/kg。ヒトの推定摂取量の1.6倍~6.7倍である。
問題なのは乳児だ。0~6カ月の乳児の推定摂取量は1~11μg/kg/日。動物実験で影響がでた投与量を超えている。その摂取源は、ポリカーボネート製ほ乳瓶からの溶出が8割(8.7μg)、粉ミルク缶のエポキシ塗装からの溶出が2割(2.3μg)だ。