WHO 環境保健クライテリア238より5 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・5.2.2 神経刺激
様々な特殊な医療用途、たとえば磁気共鳴イメージング(MRI)や経頭蓋磁気刺激(TMS)に使用されるような、大きく急激に変化する大きなパルス磁界は、体内の神経組織に刺激を与えるのに十分な大きさの電界を誘導することができる。

直径の大きな髄鞘神経軸索(20μm)の方位依存性刺激の最低閾値は、約1~3kHz までの周波数で概ね6Vm-1 であると推定されている(Reilly、1998a;Reilly、1999)。

加えて、ナトリウムチャネルの緩慢な不活性化の結果として生じる、ゆっくりと変化する刺激への順応により、低周波数の閾値が上昇する。臨床診断用の身体断面画像を得るための方法であるMRI では、神経刺激は望ましくない副作用である。

末梢神経刺激の結果として感知、不快感および痛みを生じる、MRI に用いられる切り替え勾配磁界の変化率の閾値については、Nyenhuis 等(2001)が広範にレビューしている。

一般に、磁界変化(<1ms 未満の時間)に対する認知の変化率の閾値の中央値および最低値は、向きによって15~25μTs-1 であり、かなりの個人差があることが示されている(Bourland、Nyenhuis およびSchaefer、1999)。

これらの値は、過去のReilly の推定値(1998a;1999)よりも若干低かったが、おそらく骨などの高インピーダンス組織による渦電流の収縮によると考えられている(Nyenhuis 等、2001)。

切り替え勾配電磁界により誘導された電流のパルス幅が小さくなると、閾値は上昇する。

最低閾値(基電流)の2 倍に相当するパルス幅の中央値(時値)は360 から380μs の間であるが、これにもかなりの個人差があった。

Nyenhuis 等(2001)が調べた84 人の被検者に関する、パルスにより誘導される電界の数値計算を用いて、60Hz での末梢神経刺激の中央閾値は48mT と推定されている(Bailey およびNyenhuis、2005)。

更に、Nyenhuis等(2001)はボランティア被験者についての測定データを用いて、組織内部での基電流電界を2.2Vm-1 と推定している。
TMS は、認知プロセスの研究において、一時的な機能障害を引き起こすために脳の一部を意図的に刺激する用。

更に、TMS では、頭部表面に設置したコイルを介してコンデンサーから放電することにより、短時間で局所的に、閾値以上の刺激を下部皮質組織のわずかなニューロンに与えることができる(Reilly、1998a)。

誘導電流は、その部分のニューロンに同調的な脱分極を引き起こし、次に不応期を生じさせる(Fitzpatrick およびRothman、2000)。認知作業に不可欠
だと考えられる脳の一部にパルス界が印可されると、脱分極が生じて認知作業の遂行能力を干渉する。

このため、TMS は原理上、非常に特異的な、空間的および時間的に正確な妨害(時に「仮想障害」として知られる)を認知プロセスに誘導できることを認知神経科学者に示している。

Reilly(1998a)は、誘導電界の閾値が20Vm-1 程度であると記している。

但し、Walsh およびCowey(1998)は、脳組織に一時的に500Vm-1 の電界を誘導する典型的な磁界変化率は、100μs の時間に対して30kT s-1 だと主張している。
人々は、誘導電界に対する感受性について個人差を示す傾向がある。特に、てんかん症候群は、ニューロン興奮性と同調性の亢進によって特徴づけられる(Engelborghs、D'Hooge およびDe Deyn、2000)。

発作は、ニューロン群の極端に同調的かつ持続的な放電により生じる。
TMS には有害な影響はなさそうであり、広く使用されている。

但し、TMS の反復使用は、一部の感受性のある被験者にてんかん様発作を生じることが観察されている。

これらの著者等は、短期および中期の記憶障害も報告しており、シナプス活性の変化または神経伝達物質のバランス変化による長期認知影響の可能性について言及している。

TMS の反復使用の安全性に関する国際ワークショップで合意されたTMS 使用に対する禁忌(Wassermann、1998)には、てんかん、てんかん発作の家族歴、三環系抗うつ薬、精神安定剤およびその他の発作の閾値を下げる薬物の使用、がある。

重度な心疾患および頭蓋内圧の上昇も、発作により誘発される合併症が考えられるので、禁忌として示唆されている。