・【特集・日曜ルポ】小向小シックスクール問題を考える■「正確な原因究明は困難」と推測論
小向小新校舎シックスクール問題の原因物質特定のための調査を道立衛生研究所などに依頼した市教委の報告を見てみよう。
校舎完成時検査(後で詳述)を含めて、文科省厚労省が指針値を設けているホルムアルデヒド、トルエンなど13種の化学物質全てにおいて国の指針値を下回っていたにもかかわらずこのような「結果」(健康被害)が生じた、と前置きした上で市教委が専門機関の調査結果から正確な原因究明は困難であり「推測論」としてシックスクールの原因について報告している結論部分は「道立衛生研究所が原因の要因と指摘しているテキサノール、ピロリドン(昨年6月の測定で高濃度検出)を含めた室内空気中の総揮発性有機化合物濃度(TVOC)が国の目標値400マイクログラム毎立方メートルを大きく上回っていた可能性が十分考えられ、これが原因で健康被害が発生したものと推測している」。
■5℃の完成検査20℃換算でも指針値内
この結論に至る判断の根拠として市教委は2つ挙げている。1つ目は当初から地域住民の間で不信感を呼んでいた一昨年12月の校舎完成引き渡し後に施工業者がサンプリングして文科省指定6物質を測定した完成検査時の5度という低温条件の妥当性についての説明だ。
ホルムアルデヒド(指針値0・08PPM)が0・01~0・02PPM、トルエン(同0・07PPM)が0・02PPM検出され、いずれも指針値以下で問題なしという説明が当初からくり返され、住民の間では「もっと温度を上げて測っていたら高濃度の数字が出て健康被害を未然に防げたのでは」という疑問の声が広がっていた。これに対する説明は「この値が20度に置き換えた時に指針値に近い数値が検出された可能性がありますが、道立衛研の小林博士の考察によりますと、ホルムアルデヒドは夏場の建物全体が暖まった時が最も多く放散されることから12月の完成時に20度に室温を上げて測定したとしても、夏場ほどの高い濃度での検出はあり得ないとのことでした」とまとめている。
さらに今回初めて具体的な数値を示して分析業者(ベターリビング分室)の試算結果を紹介している。
それによると0・02PPMというホルムアルデヒド測定値は実測値0・015901の少数第3位以下を四捨五入した数値で、これを20度に換算すると0・07PPMになり、指針値は超えていない、という。
■高濃度2物質が原因の可能性高い
また昨年6月から室内空気中の化学物質調査を続けてきた道立衛研の分析結果から、国がまだ指針値を定めていないテキサノールとピロリドンの2物質が高濃度で検出されたことから、校舎を使用開始した頃にはこの2物質の濃度が最も高く、総揮発性有機化合物濃度(TVOC)も国の暫定目標値400マイクログラム毎立方メートルを大きく上回っていた可能性が高かったと思われる、と説明している。
■建材の直接検査求める不安の声
原因物質の特定は困難という報告を聞いたある出席者から「これで心配ない、とはとても受け止められない」という声が上がった。
室内空気の測定で「これだ」という発生源を突き止められなかったのなら、医者がMRIなどの間接診断でもわからない場合患者の体を切開して直接診断するように、校舎に使用した建材そのものを直接調べるべきではないか。時間と費用がかかっても子ども達の将来がかかっている以上、「原因物質を特定して除去する」という当初の方針を貫いてほしい、という要望だった。