・wikipediaより
概要 [編集]
スプレー剤の形で、綿、米、果樹に使用される。日本ではかつてニカメイチュウ、シンクイムシ類に対する特効剤として知られた。
この薬が植物体に浸透する性質があるためである。
さらにパラチオンは、植物体内で酵素によって容易に分解されるため、DDTやBHCのように長く残留しない。
パラチオンを散布した稲の藁や籾を牛や鶏に食べさせてもなんの問題も起こらなかった。ただ直接的な人畜毒性が問題視されたのである。
一般的に市販されている溶液は 0.05 から 0.1% の濃度である。
多くの食用となる作物に対して使用が禁じられている。非常に高い毒性を持つこと、および汚染源となることから、2005年の時点で日本、欧州連合、スイス、ペルー、チリなど少なくとも18か国以上において使用が禁止されている。
日本では毒物及び劇物取締法により特定毒物に指定されており、非常に厳重な規制がなされている。
民生利用はほぼ不可能であり、研究目的での製造・使用にも官公庁への申請と認可が必要である。
変異原性、催奇性、発癌性を持つことが実験によって示されている。
哺乳類・鳥類・昆虫・水棲動物に対して非常に有害である。
かつて健康被害や生態学的被害が問題とされた結果、カルバメート、ピレスロイド、他の有機リン化合物など、より安全で毒性の低い多くの代替品が開発され、それらの使用に移行している。
物性 [編集]
純粋なものは白色結晶だが、通常、散布されるのは腐った卵やニンニクの臭いがする茶褐色の液体である。
多少不安定であり、太陽光にさらすと黒ずむ。
アセトン・アルコール・エーテルに対しては可溶。水・石油類に対する溶解度は低い。
ヒトのLD50 は 10 mg/kg程度、マウスでは6 mg/kg程度である。参考として、メタミドホスはヒトの場合30 mg/kg程度。
定性・定量は試料を有機溶剤抽出したのち、通常ガスクロマトグラフまたはガスクロマトグラフ-質量分析計を用いて行う[2]。
高速液体クロマトグラフでも可能なようである。ただし、こういった農薬の定量分析については、公的データとして提出・発表するためには規定のシーケンスがあるため、通例はそちらに従う。
歴史 [編集]
E605ドイツの企業複合体IG・ファルベンのゲルハルト・シュラーダーによって1944年に開発された。
第二次世界大戦後に西側連合国がその特許を接収し、以後パラチオンは様々な企業から種々の商品名で販売された。ドイツでもっとも知られた商品名は E605 (2002年以降)である。
これは食品添加物のE番号とは関係なく、「E」は ドイツ語で開発番号を意味する Entwicklungsnummer の頭文字である。